建設業の元請業者・下請業者が負うべき社会保険加入対策

元請業者と下請け業者の義務

一人親方とは

かつて、建設業者、特に下請業者についは社会保険や労働保険の未加入が問題になっております。人を雇う際には、社会保険・雇用保険などの支払い負担が増えることから、雇用するのではなく、技術者を開業させ(個人事業主となる)、それと請負契約を結ぶ(これを一人親方と呼びます)ことで、保険加入義務を免れよう(これを、偽装一人親方と呼ぶそうです)としております。
一人親方は現場での事故で負傷した際に十分な補償が得られない可能性が高く、国土交通省でも、それを防ぐため、「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」を施行し、元請業者・下請業者の役割と責任について規定しております。

※「一人親方」の定義
国交省によれば、適性と考えられる一人親方の定義として、
①請け負った仕事に対し、自らの責任で完成させることができる技術力と責任感を有し」て現場作業に従事できる個人事業主である。
②①の「技術力」を図る基準として「実務経験年数が10年以上」であり、かつ様々なポジションを経験し建設キャリアアップシステム(CCUS)でレベル3相当の実力がある。
としています。


元請業者の責任

①社会保険が未加入である下請業者に対して加入を勧めるよう指導し、それでも未加入のままの下請業者は発注をしない。
※社会保険加入の指導をしたにも関わらず、加入義務があるのに加入しない下請業者は、下請に選定しないようにするよう求めています。


②見積書には、必要経費として法定福利費を見積書内訳明示し、適切に確保している場合、それを尊重する。
※法定福利費とは、社会保険や雇用保険・労災保険など、加入義務のある福利厚生費のことです。

※元請業者が、法定福利費を一方的に削減したりなどは厳に慎むよう求めています。


下請業者の責任

①雇用する労働者の適切な社会保険への加入を行う。
※上記一人親方と請負関係にある場合でも、実態が労働者であれば、早期に雇用関係を締結し、適切な社会保険に加入させる。
②元請業者が行う指導等に協力する。
③法定福利費を含む見積書を元請業者に提出する。

なお、2023年11月~24年1月の間に実施した一人親方の業者への実態調査(国土交通省)では、上記ガイドラインが遵守されていない実態が明らかになっております(2月5日建設工業新聞より)。