建設業許可を取得した後の事業者の義務。神山和幸行政書士事務所

建設業許可取得後の義務

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建設業許可取得後も、様々な義務があります。
大まかに言うと、「許可行政庁への届出」「業者同士の契約についての義務」「工事現場で遵守すべき義務」の3つです。

建設業許可を取得した後は、以下に掲げる義務を負います。

①許可行政庁への届出義務  許可業者には、許可申請時に申請した内容に変更があった場合に届出をする義務が課せられています。 詳細はこちら

②標識の指示、帳簿の備付と保存及び営業に関する図書の保存義務  建設業の許可を受けたものは、その店舗及び建設工事の現場ごとに、公衆の見やすい場所に、標識を掲げなければなりません。  
  請負契約の内容を適切に整理した帳簿を営業所ごとに備え、5年間(新築住宅の建設工事に係るものは10年間)保存しなければなりません。営業に関する図書については、建設工事の目的物引き渡しから10年間保存しなければなりません。

 帳簿に記載する内容は以下の通りです。
1.営業所の代表者の氏名およびその者が営業所の代表者となった年月日
 
2.注文者と締結した建設工事の請負契約に関する事項
・請け負った建設工事の名称および工事現場の所在地
・注文者と請負契約を締結した年月日
・注文者の商号・名称(氏名)・住所・許可番号
・請け負った建設工事の完成を確認するための検査が完了した年月日
・工事目的物を注文者に引き渡した年月日
 
3.発注者(宅地建物取引業者を除く)と締結した住宅を新築する建設工事の請負契約に関する事項
・当該住宅の床面積
・建物瑕疵負担割合(発注者と複数の建設業者の間で請負契約が締結された場合)
・住宅瑕疵担保責任保険法人の名称(資力確保措置を保険により行った場合)

4.下請負人と締結した下請契約に関する事項
・下請負人に請け負わせた建設工事の名称および工事現場の所在地
・下請負人と下請契約を締結した年月日
・下請負人の商号・名称、住所、許可番号
・下請負人に請け負わせた建設工事の完成を確認するための検査を完了した年月日
・下請工事の目的物について下請負人から引き渡しを受けた年月日
 
5.特定建設業者が注文者となって資本金4,000万円未満の法人または個人である一般建設業者と下請契約を締結したときは、上記の記載事項に加え、以下の事項
・支払った下請代金の額、支払年月日および支払手段
・支払手形を交付したとき・・その手形の金額、交付年月日および手形の満期
・下請代金の一部を支払ったとき・・その後の下請代金の残額
・遅延利息を支払ったとき・・その額および支払年月日

③契約締結に関する義務  請負契約の締結に関しては、着工前書面契約の徹底、契約書面への記載必須事項の規定等の義務があります。

(請負契約書に記載すべき事項)

1、工事内容

2、請負代金の額

3、工事着手の時期及び工事完成の時期

4、前払金または出来高払の時期及び方法

5、当事者の申し出があった場合における工期の変更、請負代金の額の変更または損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め

6、天災その他の不可抗力による工期の変更または損害の負担及びその額の算定方法に関する定め

7、価格等の変動若しくは変更に基づく請負代金の額または工事内容の変更

8、工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め

9、注文者が工事に使用する資材を提供し、または建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容及
び方法に関する定め

10、注文者が工事の全部または一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引き渡しの時期

11、工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法

12、工事目的物の瑕疵担保責任または瑕疵担保責任に関する保証等の措置に関する定めをするときは、その内容

13、各当事者の履行の遅滞その他の債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金

14、契約に関する紛争の解決方法



④工事現場における施工体制に関する義務  工事現場には、主任技術者(または監理技術者)を配置しなければなりません。また、請負代金の額が3500万円(建築一式工事の場合は7000万円)以上の工事に係る主任技術者(または監理技術者)は、当該工事現場に専任しなければならず、ほかの工事現場との兼務はできないこととなっております。
※営業所の専任技術者と工事現場の主任技術者について
営業所の専任技術者は「営業所に常勤して専らその職務に従事することを要する者」とされています。 よって、配置された営業所に常駐していなければなりません。従って、営業所専任技術者を工事現場に配置することは原則的にはできません。これは主任技術者及び監理技術者としては無論のこと、一般作業員としても同じです。      
 なお、当該営業所において請負契約が締結された建設工事であって、工事現場の職務に従事しながら実質的に営業所の職務にも従事しうる程度に工事現場と営業所が近接し、当該営業所との間で常時連絡をとりうる体制にあるものについては、「営業所に常勤して専らその職務に従事」しているものとして兼任が認められています(ただし、上記請負金額以上の場合は認められない)。
 どのくらいの距離について「工事現場と営業所が近接」していると認められるかについては、営業所及び工事現場の所在地により個別に判断します。


⑤一括下請負の禁止・下請代金支払に関する義務  建設業者は、原則として、その請け負った工事を一括して他人に請け負わせてはいけません。「一括して・・・」とはいわゆる丸投げのことですが、主要な工事を下請に出すこともそれと同様とみなされます。また、下請としてそのような工事を請け負ってはいけません。従って、一式工事の許可をもって建設業者が一式工事の下請工事を請け負うというケースは原則としてあり得ないということになります。
 建設業法第22条により、公共工事については一括下請は禁止されておりますが、民間工事において、あらかじめ書面にて発注者の承諾を得ている場合、禁止からは除外されます。ただし、書面にての承諾が必要です。なお、共同住宅については、平成18年の改正により、一括下請契約は禁止されています。
 そこで必要な「実質的な関与」ですが、具体的には現場の監理技術者を常駐させることがまず必要です。また、施工は下請に任せるにせよ、材料は元請で準備させることが望ましいです。最後に、これは基準等に明示されてませんが、だいたい受注金額の2割を元請が取る方がいいでしょう。