昨年(令和5年)4月施行の改正農地法により、新規農業参入のハードルが下がりました。下限面積の制限が削除されました、つまりまったく農地を所有していない方々でも、農業を始められるようになります。
コロナ禍の影響で、在宅ワークが進み、通勤せずに自宅で仕事する業種が増加したことで、時間的に余裕が生じ、それを期に農業を家庭菜園感覚ではじめてみようという方が増えましたが、その障害のひとつとして、「下限面積要件」というものがありました。
下限面積要件とは、農地を取得した後の合計農地面積がある一定の面積以上でなければならない、という規定です。
下限面積要件撤廃により、家庭菜園感覚で農業を始めてみよう…と思っている方々も多いと思われます。
ただし、農業参入にはまだハードルが残っていることに留意する必要があります。
それでは、そのハードルとはなにか、について簡単にご説明しましょう。
① その他の要件は遵守する必要がある。
「(農地法)3条許可申請の基準と手続」でもご紹介した通り、下限面積以外の要件は維持されますので、それらは遵守する必要があります。農林水産省としては、下限面積を撤廃した理由は「農業従事者が減少していることに歯止めをかける」ことです。せっかく下限面積を撤廃し許可しても、農業を続ける見通しがなければ意味がありません。農地を無駄なく、世帯全体で効率よく農業に従事し、周辺の農地への影響がないことが必要となります。
②三条許可を得てすぐに転用できない
三条許可を得ると、所有権などの権利が移転します。その直後に転用をすることは、農地法の主旨に反します。そのような
転用は違反転用とみなされ、許可は取り消されます。おおよそ三年は最低限農業を続ける必要があります。
③営農計画書に沿った農業に従事する。
新規に農業を始める場合、許可申請の添付書類として、「営農計画書」というものがあります。
その計画の通り、農業を続ける必要があります。
このように、農地法の下限面積要件以外の要件は維持されますので、三条の許可を得る前にしっかりとした営農を進めてください。
(補足)
①農業参入資金は十分ですか?
農業を始めた方々から話を聞くと、営農当初はすぐに資金が底をつく危機が何度も訪れたということです。(この話は農業以外の事業を始めるのにも共通しますが)特に農業は自然相手に進める事業なので、その点をしっかりと留意して計画を立てましょう。
②農地は確保できてますか?
③農業用機器は確保できてますか?
①、②の確保ができたら、営農計画に沿った農業用機器・設備を確保する必要があります。事業が軌道に乗るまでは、中古でも構いません。
④栽培の指導を仰ぐ信頼できる先輩を確保してますか?
最終的に全責任をとるのはあなた一人(あるいは家族・世帯)です。ただ、何らノウハウもなく農業を始められるのは難しい(近年はインターネットで情報を得られる場合もありますが)。地元の農協には農業指導員もおりますし、購入農地の近隣に農業従事者の先輩方がおられましたら、心強いです。農地法では、周辺農地の影響がないことも条件の一つとなっておりますので、積極的に指導を仰ぎましょう。