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農地転用の許可基準

農地転用許可基準の概要

農地転用の許可基準は、農地の営農条件や周辺の市街地化の状況から見て転用の可否を判断することとし、農用地区域内にある農地や集団的に存在する農地その他の良好な営農条件を備えている農地については、原則として許可することができないものとする一方、市街地の区域や市街地化が見込まれる区域内にある農地については、許可し得るものとしています。また申請に係る用途に供することが確実と認められない場合や周辺の農地の営農条件に支障を生じるおそれがあると認められる場合には許可されません。

農地転用許可基準は、次の2つの基準に大別され、この2つの基準のどちらも満たさなければ許可されません。
①農地をその営農条件や周辺の市街地化の状況から区分し、許可の可否を判断する基準(立地基準)
②農地転用の確実性や周辺農地等への被害防除措置の妥当性などを審査する基準(一般基準)

立地基準

立地基準は営農条件に優れた農地の確保を図りつつ、社会経済上必要な転用需要にも適切に対応するため、農地を次の5つに区分し、農業生産への影響の少ない第3種農地等へ転用を誘導するものであり、その基準の概要は次の通りです。

区分 営農条件、市街地化の状況   許可の方針
農用地区域農地 市町村が定める農業振興地域整備計画において農用地区域とされた区域内の農地 原則不許可(土地収用法、農用地利用計画において指定された用途に供する場合等は例外的に許可される場合がある)
甲種農地 第1種農地の条件を満たす農地であって、市街化調整区域内の土地改良事業等の対象となった農地(8年以内)等特に良好な営農条件を備えている農地 原則不許可(土地収用法他、各法律による施設等の建設・利用等の場合は例外的に許可される場合がある)
第1種農地 10ha以上の規模の一団の農地、土地改良事業等の対象となった農地等良好な営農条件を備えている農地 原則不許可(土地収用法他、各法律による施設等の建設・利用等の場合は例外的に許可される場合がある
第2種農地 鉄道の駅が500m以内にある等市街地化が見込まれる農地又は生産性の低い小集団の農地 周辺の他の土地に立地することができない場合等は許可
第3種農地 鉄道の駅が300m以内にある等の市街地の区域又は市街地化の傾向が著しい区域にある農地 原則許可


一般基準

一般基準では、農地の投機的取得や遊休化、また転用に伴う営農条件への支障を防止するための基準が設けられていますが、その概要は次の通りです。

次のいずれかの該当するときには許可することができない。

①次に該当し、農地を転用して事業の用に供することが確実と認められない場合。
・転用行為を行うのに必要な資力があると認められない場合
・転用の妨げになる権利を有する者の同意を得ていない場合
・許可を得た後遅滞なく転用する見込みがない場合
・事業に必要な行政庁の許認可等を得ていない場合
・事業に必要な法令(条例を含む)により義務付けられた行政庁との協議を現に行っている場合
・申請に係る農地の面積が事業の目的からみて適正と認められない場合

②農地の転用により周辺の農地の営農条件に支障を生じるおそれがある場合
③仮設工作物の設置など一時転用の場合に、利用後に速やかに農地に復元することが確実と認められない場合
(農地法5条のみ)
④一時転用のため所有権を取得する場合
⑤農地を牧草放牧地にする場合に、法3条2項の規定に抵触する場合




一般基準以外の条件

1.申請書に記載された事業計画に従って事業の用に供すること
2.許可に係る工事が完了するまでの間、本件許可の日から3カ月後及びその後1年ごとに工事の進捗状況を報告すること。また許可に係る工事が完了したときは、遅滞なくその旨を報告すること。
農地転用の事業計画通りに工事が完了できない場合、その完了できないことにやむを得ない事情がある場合には、許可権者に対して事業計画の変更承認を得なければなりません。また農地転用許可を再度受けなければならない場合もあります。


違反転用の罰則

1「違反転用」・・・3年以下の懲役、あるいは300万円以下の罰金(法人は1億円以下の罰金)
2「違反転用に係る原状回復命令違反」・・・3年以下の懲役、あるいは300万円以下の罰金(法人は300万円以下の罰金)
◎違反転用に対する都道府県知事等の原状回復等の措置
違反転用に対し、農林水産大臣または都道府県知事は、原状回復等の措置を自ら講じることができるようになりました。
この費用はその費用を明示した上で、違反者の負担となります。


農地転用(農地法4・5条)許可申請書類・添付書類一覧

以下は一例です。府県や市区町村によって多少異なります。

1.申請書 (提出部数2部)
2.土地の登記事項証明書
3.転用理由書
4.位置図及び付近見取図(住宅地図でも可能)
5.隣接地の所有者一覧(地番、地目、所有者等)
6.工事の予算見積書及び土地取得費に係る契約書写し等
7.資金証明書(預金残高証明書、融資証明書等)
8.建物または施設等の平面図、立面図
9.排水計画書及び排水計画図面
10.土地改良区の意見書
11.同意書 (隣接農地所有者または耕作者の同意)
        (水利権者等の取水・排水についての同意)
        (自治会等の意見書)
12.他の権利等が設定されている場合の権利者の承諾書
13.その他
 ・分譲住宅である場合の宅建免許証の写し
 ・賃貸借、使用貸借である場合の契約書の写し
 ・法人が申請する場合の法人登記申請書及び定款
 など・・・

なお、1000㎡を超える面積の転用許可申請の場合、農業委員会で審議される前に、申請者と農業委員による面接、現地視察がある場合があります。

転用許可申請の添付書類の一部削除について(令和4年)

上記添付書類のうち、隣接農地所有者、自治会長等による「同意書」については、農林水産省農村振興局長の「農地転用許可事務の適正化及び簡素化について(令和4 年3 月31 日付・3 農振第3013 号)」において、農地転用許可申請の簡素化を図る観点から、今後不要になる見込みです。
府県から市町村への指導を受け入れるのは、ハードルが高いとは思われますが、簡素化の一層の努力をしてまいる所存です、


他の留意事項

◎許可に必要な関係権利者の同意について
農地転用の許可は、申請に係る農地の転用行為の妨げとなる権利を有する者の同意を得ていない場合は許可をすることはできません。

1.所有権以外の権限に基づいて申請をする場合における所有者の同意
2.申請に係る農地につき、地上権、永小作権、質権、賃借権に基づく耕作者がいる場合におけるこれらの者の同意

◎使用貸借の取扱い
 第三者が転用のために農地を取得する場合においては、農地の賃貸借は農地法16条1項(賃借権の登記がなくても、農地の引渡しによって第3者に対抗できる)により当該第三者に対抗できますが、使用貸借による権利により耕作している場合には、当該耕作者は当該農地を取得する第三者に対抗できないので、「転用の妨げになる権利を有する者」には該当しません。

◎隣接土地所有者の同意
 隣接土地所有者の同意は、「転用行為の妨げとなる権利を有する者」の同意ではありませんが、周辺農地の被害防除措置の妥当性の審査に当たって、参考とする資料として求められることがあります。

◎隣接住居者の同意
 隣接した土地上に住居がすでに建っている場合、申請上では同意の必要はありませんが、新たな設備が建つ予定の場合、その設備が周辺住民の生活に直接影響を及ぼすことのないように配慮する必要があります。自治体によってはその点について助言・指導のある場合があります。

◎許可の承継
 農地転用の許可は、その審査にあたり、誰が転用を行うかが大変重要な要素の一つです。また申請者の資金計画等そのものの資力、信用に及ぶことから、相続が発生した場合には、改めて農地転用の許可を得なければなりません。

転用後の流れ

1.(5条)所有権の移転
2.工事開始
3.工事完了・・・農業委員会に報告
4.(4条、5条)地目変更登記

※なお、現所有権者は各市町村農業委員会へ、転用許可後3カ月以内と1年ごとに報告する必要があります(工事完了後の報告で終了)。