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「宅地造成及び特定盛土等規制法」(通称「盛土規制法」)について

盛土等による災害から国民の生命・身体を守る観点から、盛土等を行う土地の用途やその目的にかかわらず、危険な盛土等を全国一律の基準で包括的に規制する「宅地造成及び特定盛土等規制法」(通称「盛土規制法」)が、令和5年5月26日から施行されました。
  ※ 盛土規制法は、国土交通省と農林水産省による共管法です。

目次
1.抜本的な改正の背景
2.主な改正点
3.許可申請から工事完了までの流れ

1.抜本的な改正の背景

 令和3年7月に静岡県熱海市での大雨に伴う大規模な土石流災害が発生しました。強引な土石を埋め立て、しかも当時は規制区域外であったため、人的・物的損害を出したにもかかわらず、責任の所在が不明確でした。
そのような反省を踏まえ、新たに「盛土規制法(宅地造成等規制法の大改正)」が施行されたわけです。

2.主な改正点

①規制区域の設定・・・宅地造成等工事規制区域に加えて、「特定盛土等規制区域」を設定しました。市街地や集落などから離れてはいるものの、地形等の条件から「盛土等が行われた場合人家等に危害を及ぼしうるエリアなど」を指定できます。指定できるのは各都道府県であり、関係市町村の意見を聞いた上で指定することとなりました。
特定盛土等規制区域のイメージ
②規制範囲の拡大・・・①にある通り、市街地や集落から離れている地域も特定盛土等規制区域に指定されるのみならず、これまでは「宅地の造成」のための切土・盛土のみが規制されましたが、今後は土地(森林・農地を含む)の造成するための切土・盛土が規制対象に改められました。

例えば、ある土地を造成する場合に発生する土石を別の場所に一時保管する場合は許可が必要であり、その許可申請者は工事事業者となります。加えて、その一時保管場所の所有者は、許可を得た業者に対して使用の同意を得る必要があります。

③規制区域内での盛土許可制の導入・・・以下の盛土などを行うには都道府県知事の許可が必要となります。
規制区域での許可対象にあたる工事

④盛土等を行うエリアの地形・地質等に応じて、災害防止のために必要な許可(技術)基準を設定、許可基準に沿って安全対策が行われているかどうかを確認するため、「施工状況の定期報告」「施工中の中間検査」「事完了時の完了検査」を実施することとなりました。

⑤規制対象への施策
・都道府県や市が許可地の一覧を公表
・工事主が工事現場に標識を掲示
・工事主が周辺住民に事前周知
※無許可で盛土等の行為を行ったり命令違反者には懲役刑や罰金刑が科されます

3.許可申請から工事完了までの流れ

盛土を行うための許可申請から工事完了までは以下の流れとなります。

許可申請から工事完了までの流れ
※ただし、特定盛土等規制区域による規制は、各都道府県が区域を設定して以降となります。

※当該開発行為が「宅地造成及び特定盛土等規制法(以下、「盛土規制法」という)」に規定される⼯事の場合、開発許可を受けることで、盛土規制法の許可を受けたものとみなされ(以下、「みなし許可」という)、別途に盛土規制法の許可を受ける必要はありません。また都市計画法に基づく変更の許可⼜は軽微変更の届出、⼯事完了の届出、検査済証についても同様に盛土規制法における同手続としてみなされ、別途に手続を行う必要はありません。
 なお、みなし許可となる⼯事であっても、以下の手続は都市計画法に基づくものとは別に、盛土規制法等に基づく申請等が必要です。

・中間検査の申請
・定期の報告

参考文献:「国土交通省」HP/東京都都市整備局「開発行為等の手引」

改正都市計画法の施行について

改正都市計画法の施行について(令和4年4月施行)

近年、激甚な自然災害が頻発しております。その激甚災害に対応するため、災害ハザードエリアにおける新規立地の抑制、移転の促進、防災まちづくりの推進の観点から総合的な対策を講じる必要があることから、「都市再生特別措置法等の一部を改正する法律」により都市計画法の一部が改正され、令和4年4月1日から施行されることとなりました。
 
主な改正内容は以下の通りです。
<地域の判断を要することとするための改正>
1.大規模集客施設の立地規制
○ 市街化区域の立地規制
○ 非線引き白地の立地規制
2.準都市計画区域制度の拡充
3.開発許可制度の見直し
<柔軟で機動的な地域の判断を可能とするための改正>
4.用途を緩和する地区計画制度の創設
5.都市計画手続の円滑化
<広域的調整手続の円滑化のための改正>
6.広域調整手続の充実

 改正都市計画法のポイントの説明図
ポイントは以下の通りです。

①原則的に災害レッドゾーンにおける開発行為の禁止
 これまでは「自己の業務に供する施設」については規制の対象外でしたが、令和4年4月より、「自己の居住の用に供する住宅」の開発行為以外は原則的に禁止となります。
 ただし、以下の事例の場合は例外的に許可される場合があります。
 
・災害レッドゾーンの指定が解除されることが決定している場合
・開発区域に占める災害レッドゾーンの割合が僅少であるとともに、フェンスを設置すること等により当該災害レッドゾーンの利用を禁止し、又は制限する場合
・工房、倉庫等の自己業務用の施設で利用者が開発許可の申請者のみの場合
・災害危険区域を指定する条例による建築の制限に適合する場合
 
②市街化調整区域内の開発行為の厳格化
 市街化調整区域は市街化を抑制すべき区域とされており、原則、開発行為は禁止されていますが、都市計画法の規定により、市街化区域に隣接し、又は近接し、かつ、自然的社会的諸条件から市街化区域と一体的な日常生活圏を構成していると認められる地域であっておおむね50以上の建築物が連たんしている地域のうち、条例で指定する土地の区域(条例区域)では一定の開発行為が可能となっております。
 今回の改正により、この条例で指定する区域には、原則的に災害レッドゾーンを禁止とし、災害イエローゾーン制限を厳格化することになります。
 また、その他、農用地等の除外すべき区域についても、原則として条例区域に含めることができません。
  なお、レッドゾーン・イエローゾーンともに、「土砂災害防止法」「地すべり法」「急傾斜地法」等において、それぞれ定められています。

レッドゾーンとイエローゾーンの一覧表

<レッドゾ
ーン>

・災害危険区域・ 地すべり防止区域・ 土砂災害特別警戒区域・ 急傾斜地崩壊危険区域
・ 浸水被害防止区域

<イエローゾーン>
• 土砂災害警戒区域• 浸水想定区域
(洪水等の発生時に生命又は身体に著しい危害が生ずるおそれがある
土地の区域に限る。)→ 想定浸水深が3.0m

ただし、災害発生時に土砂災害防止法や水防法に基づき、地域防災計画に定められた避難場所への確実な避難が可能な区域である場合など例外規定があります。


砂防指定地内行為許可申請

砂防法とは?

豪雨等による山崩れ、河床の浸食等の現象に伴う、不安定な土砂の発生と、その流出による土砂災害を防止することにより、望ましい環境の確保と河川の治水上、利水上の機能の保全を図ることを目的として制定された法律が「砂防法」です。

「砂防法」「地すべり等防止法」「急傾斜地の崩壊による災害防止法」はいわゆる「砂防三法」と呼ばれており、上記「改正都市計画法について」ですでに紹介しております。

砂防法についての解説 神山和幸行政書士事務所

国土交通大臣は、砂防設備を要する土地や地水上砂防のため、一定の行為を禁止したり、制限すべき土地を指定(砂防指定地)し、これに基づき、都道府県知事は一定の行為を禁止したり、制限することができます。


砂防指定地内行為許可申請

砂防指定地内において次に掲げる行為をしようとする時は、知事の許可を受けなければなりません。
 
①砂防設備に工作物等を設け、それを継続して使用する行為。
②河川等に流入する恐れのある場所に、土石、土砂等を堆積又は投棄する行為。
③竹木を伐採(樹根の採取を含む)し、または滑下もしくは地引により運搬する行為。
④宅地造成、開墾その他土地の原状を変更する行為。
⑤土石等を採取し、または鉱物を採取する行為。
⑥芝草を掘り採る行為。
 
ただし、「非常災害のために必要な応急措置として行う行為」や「治水上砂防に支障がないものとして規則で定める行為」については、許可が不要となります。


砂防指定地内行為許可申請 必要書類

(1) 砂防指定地内行為許可申請書
(2) 当該行為をしようとする土地(以下「行為地」という。)の場所を示す地形図
(縮尺25000分の1)
(3) 行為地及びその近隣の現況を示す実測平面図(縮尺1000分の1以上)及び縦横断図
(縮尺200分の1以上)に当該行為の全ての計画を記載したもの
(4) 当該行為に係る計画の設計書及び設計図
(5) 行為地の求積図
(6) 当該行為に係る計画の工程表
(7) 行為地の土地の登記事項証明書及び公図の写し
(8) 行為地に係る権利者等の承諾書
(9) 行為地の現況写真