神山和幸行政書士事務所による農地法の解説

土地取引のポイント

土地を購入するときのポイント

土地を探していて、ちょうど手ごろな場所が見つかったとき、まずは登記情報を手に入れるのがセオリーです。
登記情報を入手したら、実際に目を通してみますが、その時に注目していただきたいポイントは、「地目」と「地積」です。

登記情報で注目してほしいポイント

図をご覧ください。地目が、「田」や「畑」である場合、そのままでは土地取引はできません。農業委員会事務局を通じて、所定の手続を経る必要があります。

地積に応じて手続が変わる?

詳細はこちらをご覧ください。

農地法について

はじめに

農地法は、昭和27年に制定された法律です。それよりさらに6年前の昭和21年に制定された「自作農創設特別措置法」に基づき、GHQの主導の元で農地改革が行われ、大地主から強制的に買い上げた農地を小作人に分配しました。
 昭和25年現在174万町歩の農地が買収され、所管換え農地を含む193万町歩の農地が解放されました。
 ところが、この農地改革により、時代が進むにつれて日本の農業生産力を弱める遠因となっております。
 農地法の目的は、「農地耕作者が農地を所有することがもっとも適当である」ことを認め、「耕作者の農地取得の促進」を基本的な考え方としてきました。
 ところが、農地改革の結果、大地主が減少して農地所有者が大幅に増加したため、大規模な農業経営が難しくなり、日本の農業は世界的にも不利な状況に置かれているのが現状です。また、担い手不足の問題、休農地や耕作放棄地の増加も深刻となっております。
 よって、農地法は大きくその目的を変えつつあります。
 平成21年12月施行の新農地法では、「農地転用規制の強化」と「農地を効率的に利用する耕作者の新規農業参入の促進」を2本柱とし、大幅に改正されました。
 また、平成27年の改正では、農地を取得できる「農業生産法人」の要件を大幅に緩和し、「農地所有適格法人」と名称も改めています。

農地法の目的

農地法では、まず「農地等の権利移動の制限」「農地転用の制限」を規定しております。
 これは農地法の考え方のひとつである「耕作者が農地を所有することが最も適当」という理念を具体化したものです。
 本来、農地も私有財産であるので、私人間の権利移動や転用は自由であるはずですが、日本国憲法では、第29条第2項に「財産権の内容は、公共の福祉に適合するように、法律でこれを定める」とあり、「公共の福祉」に反する権利の行使は制限され、農地法に定める上記制限は、「国力の根源である」農業を守ること、農業に携わる農業従事者の生活等を守ることが目的であるから、「公共の福祉」に合致します。

※農地法の主な内容

1.権利移動の場合は、農業委員会または知事等の許可を要する。
2.農地転用の場合は、知事、または農林水産大臣の許可を要する。
3.無許可の場合、権利移転・権利設定等は無効。
4.農業委員会が農地の利用状況を調査。
5.遊休農地すべてに対し、農地利用確保のため、必要な措置を講じることが可能。


(参考)日本国憲法 第29条
1.財産権は、これを侵してはならない。
 2.財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
 3.私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。


農地の定義

第二条  この法律で「農地」とは、耕作の目的に供される土地をいい、「採草放牧地」とは、農地以外の土地で、主として耕作又は養畜の事業のための採草又は家畜の放牧の目的に供されるものをいう。
 

農地とは、「耕作の目的に供される土地」です。
農地として利用されている限り、登記上で農地以外の地目になっている土地でも、農地と判断されます。農地であるかどうかは、その現況により判断されます。
 
<農地に該当するもの>
①肥培管理が行われ現に耕作されているもの

⇒田、畑、果樹園、牧草栽培地、林業種苗の苗園、わさび田、蓮池
「判例」
桐樹、芝、牧草畑、竹または筍、養鯉場として利用された水田、庭園等に使用する各種花木栽培

②現に耕作されていなくても農地に当たるもの
⇒休耕地、不耕作地
(現に耕作されていなくても工作しようとすればいつでも耕作できるような休耕地、不耕作地等も含まれます)
 
<農地に該当しないもの>
・農地として復元することが物理的な条件整備が著しく困難な土地、その他のうちに復元しても、継続して利用することができないと見込まれる土地(運用通知)→いわゆる非農地となる土地。これを根拠に「農地ではないことの証明」が発行できる場合があります。
・家庭菜園

<判例>
・桐樹栽培で肥培管理後相当期間を経過し、現状が森林状態をしている土地
・空閑地利用
・不法開墾

農地にあたるかどうかについて、他には、「土地の形質変更を加えているか、加えていないか」も判断基準のひとつになります。つまり、例えばその土地が土・砂等の場合で形質に変更を加えていない場合、その上に棚を設けた上で農作物を作っている場合でも農地にあたりますが、土地上にコンクリート等で地固めし、または埋設し、その上で盛土等で農作物を栽培した場合、形質変更を加えたと見なされるため、農地にはあたらないということが言えます。