農地所有適格法人について
農地所有適格法人とは?
農地法では、農地所有適格法人以外の法人が農地の所有権等を取得することはできないと規定されています。
農地所有適格法人というのは、農地法で規定された名称で、農地や採草放牧地を利用して農業経営を行うことのできる法人です。農地所有適格法人になるためには、農事組合法人(農業経営を行うもの)、合同会社、合名会社、合資会社又は株式会社(株式の譲渡制限を定めるもの)で、農地法に規定された一定の要件(事業要件、構成員要件、業務執行役員要件)を満たす必要があります。
※いわゆる野菜工場でのトマト栽培、ガラスハウスでの花き栽培、鶏舎での養鶏など、農地を利用しない経営の場合は、農地所有適格法人の要件を満たしている必要はありません。 農地所有適格法人以外の法人は農地を取得することはできません。ただし、農地所有適格法人以外の法人も一定の条件の下、賃貸に限り権利取得が認められることになりました(後述)。
農地所有適格法人のメリット等
農地所有適格法人の設立の理由は以下のものがあると思います。 ・加工や販売など経営を多角化したい ・後継者となる優秀な人材を確保したい ・有志の仲間たちと力を合わせ、地域農業を守りたい 法人化には、下の図にあるようなメリットがあるといわれています。ただし、法人化するに当たっては、なぜ法人化するのか、その意義や目的を明確にすることが大切です。補助金や融資制度、税制上の優遇措置など目先の利益にとらわれるのではなく、将来的なビジョンや経営内容を見据えて、自らの経営努力を積み重ねていく中に、法人化による様々なメリットが追い風となって現れてくると考えてください。法人によって「何かが変わる」のではなく、「何を変える」のかに意識を置くことが重要なポイントです。
農地所有適格法人の要件
以下の(1)~(4)までのすべての要件を満たす必要があります。 (1)法人組織の形態要件 次の5つの形態のいずれかであること。 ・農事組合法人 ・合名会社 ・合資会社 ・合同会社 ・株式会社(定款に株式の譲渡につき取締役会の承認を要する旨の定めがあるものに限ります。)
※社団法人等の法人では農地所有はできないのでご注意ください。
(2) 事業要件 売上高の過半が農業(農業関連事業も含む。)であること。
(3) 構成員要件 【株式会社】次のア~キに該当する株主が保有する議決権の割合が1/2を超えること。 【合同・合名・合資会社】次のア~キに該当する社員の数が、社員の総数の1/2を超えること。 ア 農地等を提供した個人(農地を売ったり、貸したりした人) イ 農業(関連事業を含む)の常時従事者(原則として年間150日以上) ウ 農業協同組合、農業協同組合連合会 エ 農地を現物出資した農地中間管理機構(北海道農業開発公社) オ 地方公共団体 カ 農業法人投資育成会社(承認会社) キ 農作業(農林水産省令で定めるものに限る)の委託を行っている個人 ※ 農事組合法人にあっては、上記ア~キの他、法人から物資の供給又は役務の提供を受ける個人、その他法人の事業の円滑化に寄与する者(特許権、実用新案権等について、法人との間で5年以上の契約を締結する者)に限られています。 (4)業務執行役員要件 法人の業務執行役員全体で次の要件をいずれも満たすこと。 ①農地所有適格法人の業務執行役員の過半の者が法人の農業(関連事業を含む。)に常時従事する構成員であること。 ②常時従事する役員又は重要な使用人(農場長)のうち、1人以上が原則60日以上農作業に従事すること。
(5)農業従事要件
①農地全部効率利用要件 機械や労働力等を適切かつ効率的に利用する営農計画
②周辺農地の利用に支障がない 水利調整に参加するなど、周辺の地域における農地の農業上の利用に支障がないこと
一般の法人の農業参入について
農地所有適格法人以外の法人でも、以下の要件を満たし、かつ農地法上の許可等を取得することができれば、農地を賃借することが可能となります。 1.農地を適正に利用していない場合に貸借を解除する旨の条件を契約書に付し ていること。 2.地域の他の農業者との適切な役割分担の下に継続的かつ安定的に農業経 営を行うこと。 3.業務執行役員、又は重要な使用人(農場長等)のうち1人上の者が農業に常時従事すること。
法人設立の流れ
農業所有適格法人は、他の法人のように「設立許可(認可あるいは認定)」があるわけではありません。「農地台帳」に記載してもらうのが目的です。従って、農業所有適格法人は以下の流れになります。①営農計画の策定・・・どの地域で何の農作物を育成するのか、そのために必要な人材、器材を揃え、そのための資金はどうするのか、をじっくりと検討する必要があります。②農地の選定・・・1の計画に沿った農地を確保する必要があります。欲しい農地の現況や水利について調査することも重要となります。そもそも、農業所有適格法人は、地域との調整が必要です。③農業委員会との事前協・・・法人を設立する前に最も重要なのは、地元の農業委員会と意見を交換し、調整することが重要です。営農計画と法人役員等構成員など、様々に指導してくれますので、その指導に従って法人設立準備を整えます。④法人設立後、売買契約を締結し、農地法3条の許可を得て、売買契約を実行し、登記します。
報告
農業所有適格法人は、毎事業年度終了後3か月以内に売上高や農業従事者等の従事状況などを記載した報告書を農業委員会に報告しなければなりません(法6条)。また、添付書類として、定款の写しや名簿などを添付しなければなりません。