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「遺言信託」と「遺言代用信託」の活用

1.「遺言信託」とは?

信託とは、「法律の定める方法により、特定の者(委託者)が、別の者(受託者)に対して、特定の目的に従い財産の管理・処分・その他目的の達成のために必要な行為をすべきものとして財産の権利自体を帰属させてしまう」ことを言います。 
 つまり、委託者がその財産を管理したり処分するのを受託者に代わってやってもらう約束をするわけです。

 「遺言信託」とは、遺言の中で相続人や受遺者の生活を支えるために、遺産を管理したり、処分したり、運用するなどで増加させるなどの行為を行うものです。

信託法による遺言信託のスキーム例 神山和幸行政書士事務所オリジナル
※信託銀行等が行う「遺言信託」につきましては、遺言書作成援助業務と遺言書保管業務、遺言執行引受業務を総称した「サービス商品名」に過ぎませんので、誤解のないようにお願いします。

「遺言信託」の利用メリットとは?第二受益者や指図権者を指定する等、受益者連続型を取り入れることで、「親亡き後問題」や「配偶者(伴侶)亡き後問題」にも対処でき、連続的に有効な財産管理や資産運用、円滑な遺産承継を図れます。

・「配偶者(伴侶)亡きあと問題」への備え。
・「親亡き後問題」への備え障害のある子の生活・教育・医療・介護・療養等に係る費用の給付。
・遺された配偶者や障害のある一人っ子等の死亡後の残余財産の帰属権利者を介護施設等に指定して寄付するというスキームを構築することが可能。


(参考) 
※「後継ぎ遺贈問題」とは?
後継ぎ遺贈とは、甲が自らの死後、その全財産を乙に遺贈するが、乙の死亡後は丙に遺贈するというというように、第一次受遺者(乙)の受ける財産上の利益が、乙の死亡によって第二次受遺者(丙)に移転することを規定した遺贈のことをいいます。
後継ぎ遺贈は、甲の遺言により、甲→乙のみならず、乙→丙という財産承継をも規定するものです。 この甲→乙の部分については、単純な遺贈として有効であることに問題はありませんが、後の乙→丙の部分については法的に無効であるとされています。
 信託法では、受益者が死亡したときに他の者が受益権を取得する旨の定めがある信託は、信託がされた時から30年経過した時以後に現存する受益者が受益権を取得し、その受益者が死亡するまでの間継続する、と規定されています。
すなわち信託の場合には、第1次受益者を乙とし、乙の死亡後は丙を第2次受益者と指定することが可能であるため、後継ぎ遺贈と同様の効果を意図した資産承継を行うことが可能となります。


「遺言代用信託」とは?

「遺言代用信託」とは、「契約による信託」であるものの、「遺言」によって設定したかのような機能を持たせた信託のことをいいます(文字通り「遺言に代わって用いられる信託」です)。

遺言代用信託スキームの一例 神山和幸行政書士事務所オリジナル

上図のように、委託者生存中の当初は自らを受益者として効力を発生させた上で、委託者が死亡した時に、指定した者(特定の相続人や第三者)に受益権を承継させる信託の仕組みです。病弱、高齢、障害、判断能力低下等により自ら財産管理できない者の生活・扶養・療養等のための「福祉型信託」として、成年後見制度と併せた利用も非常に有効です。
また、「後継ぎ遺贈型の受益者連続信託」(信託法第91条)を設定することで、個々の事情に即した柔軟な財産管理・資産承継も可能になります。
なお、遺言代用信託では、委託者死亡後の受益者は、信託契約に別段の定めがない限り、委託者が死亡するまでは、受益者としての権利及び義務は一切有しないこととなります。

※「後継ぎ遺贈型の受益者連続信託」とは、受益者の死亡により、その受益権が消滅し、他の者が新たな受益者を取得する旨の定めのある信託のことです。信託が設定されてから30年を経過したときに以後に現に存する受益者が当該定めにより受益権を取得した場合であって、当該受益者が死亡するまで又は当該受益権が消滅するまでの間、その効力を有すると規定されています。

利用方法 遺言信託が遺言としての様式が求められているのと異なり、委託者と受託者との「契約」による信託となります。
また、遺言信託が委託者の死亡により効力が発生するのに対し、遺言代用信託は、信託契約締結時より効力が発生します。


「遺言代用信託」利用のメリット   委託者は、別段の定めがない限り、生前であればいつでも死亡後受益者を変更することができます。つまり、遺言書を書きかえるようなイメージです。
 例えば、委託者が自分の老後に同居し介護してくれる子を死亡後の受益者にしたいと考え、長男を受益者に指定していたが、長男が地方勤務になったので、長女が同居することになった場合、受益者変更権を行使して、長男の同意なくして、死亡後の受益者を長男から長女に変更することができます。
 また、受託者との間で信託契約の内容を変更又は解約することができますので、委託者の生存中において、予め受託者の忠実さや誠実さ、信頼性を確認することも可能です。
 通常の遺言による相続分の指定・分割方法の指定・遺贈と同様の効果を持たせることが可能になりますが、遺言や死因贈与契約と同様の目的を、敢えて相続の手続きと切り離して行いたい場合等で有効になる信託でもあります。
但し、委託者の死亡により相続が発生すると、遺言信託と同様、遺留分減殺等の問題が生じることが考えられます。