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遺言(指定分割)と遺産分割協議書(協議分割)、どちらが優先?

 相続のご相談の中で、よくある相談です。
「父が亡くなり、相続手続を進めていたのだが、弟が納得せず、話し合いは暗礁に乗り上げてしまった。そのうち、遺言書が見つかり、思わず検認の手続を取らずに開封してしまった、遺言書は無効なのか?」

 まず、自筆証書遺言は検認の手続を取らずに開封した場合、遺言としては無効となります(詳細はこちらのページ後半を参照)。

 ただ、個人の遺志はわかっているので、その内容を基準にして、通常の遺産分割手続を進めるのも、遺産分割協議を円滑に進める一つの方法ですと。
 そこで問題。仮に、自筆証書遺言を、検認の手続を取った上で有効とした場合、遺産分割協議は無駄になるのでしょうか?

遺言(指定分割)と遺産分割協議書(協議分割)、どちらが優先?

1.遺言と遺産分割
 
 遺言とは、「お亡くなりになられた人が生前に遺産の分割方法を指定する」文書のことです。詳細はこちらで解説しますが、有効な遺言により遺産分割の方法を指定すると、通常はその方法に従って遺産分割が行われます。

 
 それに対して、遺産分割とは、詳細はこちらで解説しておりますが、相続になられる人が全員で話し合い、全員が納得した上で遺産分割協議書などにより、相続人全員が同意します。
 
2.どちらが優先されるのか
 
 通常では、遺言書が有効であれば、そちらを優先します。

 ただし、「話し合いによる遺産分割に、相続人全員が同意している」のであれば、協議分割が優先します。
 

遺言が見つかったら?

📜 遺言書が見つかった場合の相続手続き

遺言書は、故人(亡くなった方)の最後の意思を伝える、最も重要な書類です。遺言書がある場合、原則としてその内容に従って相続手続きを進めることになります。
ただし、遺言書の種類によって、手続きやその後の流れが大きく異なります。遺言書が見つかった後のステップを解説します。

ステップ 1:遺言書を勝手に開けてはいけない!

まず、最も注意していただきたい点です。見つかった遺言書の種類によって、対応が異なります。

遺言の種類と対応
遺言について、詳細はこちら

 なぜ勝手に開けてはいけないのか?

自筆証書遺言を勝手に開封してしまうと、**5万円以下の過料(罰金のようなもの)**が科せられる可能性があります。また、開封された遺言書は、偽造・変造が疑われ、その後の手続きが複雑になるリスクもあります。

🏛️ ステップ 2:家庭裁判所での「検認」の手続き

遺言書の種類が「公正証書遺言以外のもの(自筆証書遺言、秘密証書遺言)だった場合、まずは家庭裁判所に提出し、「検認(けんにん)」という手続きを受けなければなりません。

検認とは?

検認とは、家庭裁判所が相続人全員を呼び出し、遺言書の状態(日付や署名など)を確認し、その存在を証明する手続きです。遺言書の内容が正しいかどうか(有効性)を判断する手続きではありませんが、その後の偽造・変造を防ぐ重要な手続きです。

手続きの流れ ポイント
1. 申立て 相続人のうちの1人などが、遺言書を保管したまま家庭裁判所に検認を申立てます。
2. 検認期日 家庭裁判所から相続人全員に通知があり、指定された日に裁判所に出頭します。
3. 開封・確認 裁判官と相続人全員の立ち会いのもとで、初めて遺言書を開封し、内容を確認します。
4. 検認済証明書 検認が済むと、裁判所から「検認済証明書」が発行されます。

この「検認済証明書」がないと、遺言書があっても銀行での預貯金の解約や、法務局での不動産の名義変更などの手続きを進めることができません。

💡 法務局での保管制度(特例)

2020年7月から、自筆証書遺言を法務局(登記所)で保管してもらえる制度が始まりました。この制度を利用して作成された遺言書は、検認手続きが不要となります。

💰 ステップ 3:遺言書の内容に従った手続き

検認(または、公正証書遺言の場合は不要)が済んだら、遺言書の内容に従って、以下の手続きを進めます。

1. 遺言執行者の確認

遺言書の中に「遺言執行者(いごんしっこうしゃ)」が指定されているか確認します。
  • 遺言執行者がいる場合: その執行者が、財産目録の作成、銀行の手続き、不動産の名義変更などを中心となって進めます。
  • 遺言執行者がいない場合: 相続人全員が協力して手続きを進めるか、家庭裁判所に遺言執行者の選任を申し立てて専門家(弁護士など)に手続きを依頼することもできます。

2. 財産の名義変更

遺言書と検認済証明書(または公正証書遺言の謄本)を使って、各種財産の名義変更手続きを行います。
財産の種類 主な手続き場所
不動産(土地・建物) 法務局(相続登記
預貯金 各金融機関(銀行・信用金庫など)
株式・証券 各証券会社

3. 相続人全員の確認と合意

遺言書の内容が、相続人全員の合意を得るのが理想ですが、遺言書の内容に納得できない相続人がいる場合は、**遺留分(いりゅうぶん)という最低限の取り分を請求できる権利があります。
  • 遺留分:兄弟姉妹以外の法定相続人には、法律で保障された最低限の遺産取得分があります。遺言書の内容がこれを侵害している場合、請求することができます。
遺言書がある場合、まずは絶対に開封せず、その種類を確認し、家庭裁判所への検認の申立てが必要かどうかを判断することが重要です。

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