1.事業協同組合とは?
事業協同組合とは、
個人事業主や法人などの中小企業者が互いに協力し、助け合う精神(相互扶助の精神)に基づいて共同で事業を行い、経営の近代化・合理化と経済的地位の向上・改善を図るための組合で、組合や組合員の事業を支援・助成するためのものならば、ほとんどすべての分野の事業が実施できます。
設立も、4人(法人)以上集まればよく、従来は同業種の事業者で設立するケースがほとんどでしたが、最近では異なる業種の事業者が連携して事業協同組合を設立し、各々の組合員が蓄えた技術、経営のノウハウなどの経営資源を出し合い、新技術・新製品開発、新事業分野・新市場開拓などを目指すものが増えています。
異なる業種の事業者ということですので、NPO法人や公益法人のような事業も可能です。
事業協同組合はすでに事業を始めている方にとっても、これから起業しようという方にも有利な組織です。とはいっても、事業協同組合ってそもそもどんな組織かピンとこない方も多いでしょう。
一般に、事業を始めるときにすぐに思い浮かぶ法人は「株式会社」です。株式会社の構成員は一人でよいのに対して、協同組合は4人必要です。これはそもそも組合が「組合員のため」に設立するものだからです。よって、株式会社とは違い、「仲間」を募る必要があります。もちろん、株式会社も「募集設立」という設立方法があり、これは出資者を募って設立するものなので、一人ではできません。しかし、
「所有と経営の分離」という言葉のとおり、株主が会社の事業を利用することは目的としていません。もっと簡単にいうと、株式会社は株主よりお金を集め、それを利用して利益を上げ、配当を株主に支払うことが目的なのです。
一方、事業協同組合は
「組合員の事業活動を補完する」ことを目的としています。一人の事業主ではできない技術開発、宣伝広報、新事業などを、複数の事業主が集まって組合を設立した上で、組合員全員のために行い、利益を得ることが目的です。
2.事業協同組合の特徴
では改めて、事業協同組合の特徴を見て参りましょう。
①設立の人数は4人以上でなければならない。・・・組合を構成する人(法人)は事業者でなければなりません。ただし、法人である必要はありません。ちなみに、NPO法人は10人以上、一般社団法人・一般財団法人は2人です。
株式会社は一人でも設立できますが、信用力の面を考えると、一人の株式会社が起業・事業拡大に向いているとは思えません。
そう考えると、組合と株式会社には人数において、それほど差はないと考えます。
②議決権は出資額に関係なく、1人1票。また、1人当たりの出資額は全体の25%を超えてはならない。 ・・・組合設立時のメンバーが4人であれば、25%×4人で、きっちり100%になります。誰かが出資額を多くするということはできません。これが3人であると誰かが25%を超えて出資しなければならなくなりますので、1.の「4人以上」は妥当な数字となります。仮に10人で設立した場合でも、一人だけが25%を超えて出資することはできません(出資額を平等にしなければならないというわけではありません)。
また、出資額と議決権は比例しません。どれだけ多く出資しても、一人一票です。
③税制上の優遇措置がある。・・・事業協同組合に対する法人税は、22%(年所得が800万円以上)です。これに対し、株式会社等は30%(同じ)であり、事業税、印紙税、固定資産税などについても非常に優遇されています。
法人設立時にかかる登記印紙税は、株式会社は15万円以上かかりますが、組合は不要です。また、領収書などの印紙も不要です。
こうした、様々な優遇措置が組合運営ではとても助かります。
④設立には認可が必要(株式会社や一般社団・財団法人などよりも信頼性が高い)。・・・設立については、事業協同組合の場合、認可を受ける必要があるため、株式会社などに比べ、非常に長い時間を費やす必要があります。認可を受けて、登記をすれば晴れて設立となりますが、それまでには所轄行政庁への認可書類提出、ヒヤリング等の手続を進めなければなりません。
また、設立後にも所轄行政庁へ毎年提出する書類があります。
ただし、この認可を受けることで、形式上書類が揃っていれば簡単に設立できる株式会社よりも、信頼度が高まります。
⑤組合事業は組合員のために組合として事業は原則として組合員のために行います。一定の割合(各事業の20%上限)で組合員以外の人の事業利用も可能です。また、組合の収益が上がるまでは、組合の役員は報酬を得ることはできません。
⑥組合員になれる者
組合員になれる者は、製造業では資本金3億円以下、卸売業は1億円以下、小売・サービス業は5000万円以下。従業員数は、製造業で300人以下、卸売業で100人以下、小売業で50人以下、サービス業で100人以下です。この基準を超える場合であっても、設立後30日以内に公正取引委員会に届け出ればOKです。
3.事業協同組合の組織
①総会(総代会)(必置機関)
総会は、株式会社の株主総会に近い組織です。組合員全員が構成する最高議決機関です。年に1回必ず開催され、また臨時総会もあります。組合員数が200人になりますと、組合員の中から選挙で選ばれた総代で構成される総代会の設置が認められます。
組合では、総会(総代会)でしか決められない重要事項があります。
(法定議決事項)
イ.定款の変更 ロ.規約および共済規程の設置・変更・廃止 ハ.事業計画・収支予算の設定・変更 ニ.経費の賦課・徴収方法 ホ.組合員の除名 ヘ.役員の選挙または選任 ト.役員の解任 チ.決算関係書類の承認 リ.解散・合併の承認 ヌ.組織変更計画書の承認 ル.出資一口の金額の減少の決定
(任意議決事項)
イ.取引金融機関 ロ.借入金の最高限度 ハ.1組合員に対する貸付金・債務保証額の最高限度 ニ.加入金の額 ホ.手数料・使用量の率・額 へ.その他、理事会で必要と認める事項
②理事会(必置機関)
株式会社の組織では、取締役会に相当する機関です。組合業務の執行について意思決定を行います。定期的に開催されるほか、代表理事の招集により臨時に開催される場合もあります。
(理事会の議決事項)
イ.総会において決定した業務の執行と執行細目の決定 ロ.総会の招集と総会への提出議案の決定 ハ.代表理事等の選任 ニ.組合員の加入の承認 ホ.持分譲渡の承認 へ.理事の自己契約・利益相反取引の承認 ト.委員会などの理事会の諮問機関等の承認 チ.賛辞・会計主任の選任・解任 リ.その他
③理事(必置)
理事は株式会社の取締役に相当します。理事会を構成・開催し、業務執行の意思決定を行います。
④代表理事(理事長)(必置)
株式会社の代表取締役に相当するのが、代表理事です。代表理事は理事会を主催し、公判で重要な職務権限を持ちます。
⑤監事(必置)
株式会社の監査役にあたります。組合の業務・会計関係書類の監査を行うのが主な役割です。1000人以下の組合では、監査権限を会計に限定することができます。
⑥事務局
事務局員は職員として、理事長等の指示に従い、業務を行います。
⑦必置(機関)でないもの
理事長を補佐する副理事長、副理事長と同様に理事長を補佐する専務理事・常務理事などがあります。なお、専務理事・常務理事は「職員」から選出されます。
4.協同組合の最大のメリットとは?
それはずばり「事業の合理化」にあるといえます。
一企業、一事業主のみでは、事業展開や資材調達、福利厚生など、事業成長にかかせない様々な要素に限界が出てきますよね?それを補完しかつ充実させるために、同業種や関連業種が集まる協同組合が大きな頼りになります。
①共同仕入れルート、消耗品の共同購買・共同リース
仕入れルートを開拓するのは一企業のみでは人脈やノウハウなどに限界がありますが、これを組合によって行うことにより省力化が図れ、事業拡大を助けます。また、高額の機械や車両などを組合で購入したりリースすることにより、必要な時に利用することができ、購入費やリース代、維持費等の費用を抑制することができます。
②経理業務・福利厚生等を組合で加入
①と同じく、コストのかかる経理業務を組合で一括して税理士等に外注したり、福利厚生等も組合事業として行えば、一企業で行うよりも大幅に省力化・コストダウンとなります。
また、法令により別団体を組織しなければならない例もあります。例えば、労働者災害補償保険法(労災法)では、一人親方等(自営業者及びその者が行う事業に従事する者(家族従事者))や特定作業従事者が労災保険に特別加入することの要件として、「一人親方等や特定作業従事者が構成員となる」事業協同組合等の団体を通じて特別加入することが要求されます。
③共同販売ルートや共同店舗出店
共同して販売ルートを開拓したり、共同店舗を出店することにより、一企業単独で行うよりも、容易に事業拡大を図ることができます。さらに一企業に対しては難しい行政の支援も受けやすくなり、組合の行うイベントなどに対する地域の助成も得やすくなります。
協同組合は一企業では困難な様々なルートの開拓、販促活動や事業維持活動の促進に大いに役立つだけでなく、それが企業の集合体であるため、活動の積み重ねによって新たな業界ルールを作ることができます。いわゆる「取引条件」の向上を図ることができます。
※当事務所では事業協同組合設立の手続をサポートさせていただいております。お気軽にお問合せ下さい。