W1.経営規模等評価の評価項目「建設工事の担い手の育成及び確保に関する取組の状況」
経営事項審査のうちの「経営規模等評価」、ここでは、「その他の審査項目(W)」における「建設工事の担い手の育成及び確保に関する取組の状況」ついて解説します。
その他の審査項目とは、建設業が社会的な責任を果たしているかどうかなどを評価します。
W点、まず最初の評価項目は「労働福祉の状況(W1)」です。
※なお、W点の計算方法は合計数×10×190/200となりますが、ここでは各配点×10で表示しております。
概要
労働福祉の状況とは、建設業者が主に労働者に対して社会保険や補償制度にきちんと加入をしているか、ということです。それらはすべて建設業にかかわらず、事業を営み、雇用する事業者が法律上求められていることです。公共工事を受注する業者なら尚更当然の責任であると考えられているのです。雇用保険・健康保険・厚生年金保険といったものに加入義務があるにもかかわらず未加入の場合、大幅な減点対象となり、その原点はそれぞれの項目ごとに、マイナス400点です(P点換算後はマイナス57点)。なお、適用除外である場合は減点対象とはなりません。
なお、W1は①~⑩の項目に追加されました。
1.雇用保険
雇用保険は、労働者を一人でも雇用していれば加入しなければなりません。これは法人・個人を問いません(65歳以上に新たに雇用される労働者は適用除外でしたが、平成29年よりこの場合でも原則として雇用保険被保険者となることとなりました)。
加入の確認は、「労働保険概算・確定保険料申告書」と「労働保険料の領収証」の原本提示・写しの提出により行います。
なお、法定外労働災害補償制度の加入の評価による加点を求める場合は、その基本となる労災保険の加入確認が行われますので、結論として雇用保険と労災保険の両方の申告書と領収証が必要ということになります。
2.健康保険
健康保険は、健康保険法に基づいて、以下のように取り決められております。個人・・・従業員5人以上で加入義務あり。
法人・・・従業員の有無を問わず加入義務あり。
※ただし、適用除外など諸規定があります。加入の確認は、「社会保険標準報酬決定通知書」および「健康保険の納付が分かる領収証等」の原本提示・写しの提出により行います。なお、建設業各種組合による職域別の国民健康保険に加入している場合は、健康保険について適用除外(減点なし)の扱いとなりますのでご安心ください(ただし証明書類は必要)。
3.厚生年金保険
厚生年金加入の義務は3.の健康保険の要件と同様となります。加入の確認は、「社会保険標準報酬決定通知書」および「社会保険料の領収証等(厚生年金保険料の納付金額が表示されたもの)」の原本提示・写しの提出により行います。なお、建設業各種組合による職域別の国民健康保険に加入している場合は、健康保険と厚生年金保険の保険者が異なるため、両方の加入確認書類が必要です。
このように、各保険の加入の確認書類は「申告書や通知書」→「支払ったことが分かる書類」の2本立てとなることが分かります。
4.建設業退職金共済制度
建設業退職金共済制度とは、建設現場で働く日雇い労働者のための退職金制度です。これは独立行政法人勤労者退職金共済機構と事業者との間で共済契約を結んでいる場合に加点(150点、P点換算後は21点)されるものです。加入の確認は、「建設業退職金共済事業加入・履行証明書」の原本提示・写しの提出により行います。この制度について、詳しくは独立行政法人勤労者退職金共済機構のWEBサイトをご参照ください。
5.退職一時金または企業年金制度
退職一時金か、あるいは企業年金制度のいずれか一つの制度が設けられている場合に加点されるものです。退職一時金(いわゆる退職金)は、独立行政法人勤労者退職金共済機構または特定退職金共済団体の加入証明書、あるいは労働基準監督署の印のある「就業規則」や「労働規約」(退職一時金の定めがあるもの)でも証明可能です。
企業年金は、退職一時金を年金の形で支給するものであり、これは厚生年金基金の加入証明書、確定拠出年金などの加入契約書などで証明します。
6.法定外労働災害補償制度
法定外労働災害補償制度は、労災保険に上積みして労災補償を手厚くする制度のことです。従って、労災保険に加入していないと、加点となりません。加入の種類と確認ですが、「(公財)建設業福祉共済団」「(一社)建設業労災互助会」「(一社)全国労働保険事務組合連合会」「中小企業等協同組合法の認可を受けて共済事業を行う者」については加入証明書、民間の保険会社の場合には、保険証券であり、以下のことが確認できることが必要となります。①業務災害と通勤災害のいずれも対象としていること。
②死亡及び障害等級第1級から第7級までにかかるすべての身体障害を対象としていること。
③下請負人の直接の雇用関係にある職員をも対象としていること。
各保険料を滞納していた場合の取扱い
余談ですが、保険の加入義務があり、もともと加入していたときに、審査対象年度に限って保険料を滞納していた場合はどうなるのでしょうか?
結論から申し上げますと、支払義務を履行していない限り、受付してもらえず、審査は保留となります。ただし、審査当日、門前払いとなるわけではありません。
なお、他府県では取り扱いが異なりますので、和歌山県外の業者様には、許可を持つ府県にてお問い合わせください。
平成30年度改正
平成30年4月1日より経営事項審査改正の審査項目及び基準等が改正されます。主な改正点は以下の通りです。 【改正内容】①W評点(その他社会性等評点)のボトムの撤廃(社会保険未加入企業等への減点措置の厳格化)W評点の計算値がマイナスの場合、0点としていましたが、マイナス点をそのまま評点とします。 この結果、W評点の最低点は、「0点」→「−1,995点」へと変わります。
7.若年の技術者及び技能労働者の育成及び確保の状況
若年の技術者及び技能労働者につき、次の2点が評価されます。(1)若年技術職員の継続的な育成及び確保の状況審査基準日時点で、若年技術職員の人数が技術職員の人数の合計の15%以上の場合、「その他(社会性等)の審査項目W(以下W点という。)」において一律1点(P点加算後)の加点(2)新規若年技術職員の育成及び確保の状況審査基準日から遡って1年以内に新たに技術職員となった若年技術職員の人数が審査基準日における技術職員の人数の合計の1%以上の場合、W点において一律1点(P点加算後)の加点技術職員は、Z点においてその資格と人数を評価対象とされていますが、今後は若者技術職員の育成及び確保の状況について、付加的な要素として新たに加点されることになりました。※若年技術職員とは、技術職員のうち審査基準日において満35歳未満の者を指します。※対象となる技術職員は、審査基準日以前に6か月を超える恒常的な雇用関係があり、かつ雇用期間を特に限定することなく常時雇用されている者に限ります。
8.知識及び技術又は技能の向上に関する取組の状況
W10(上限10点) =(技術者/技術者+技能者×技術者点(10点満点)+(技能者/技術者+技能者)× 技能者点(10点満点)
その他の審査項目(社会性等)内に新設される項目については次の通りです。 ●技術者点(10点満点) 審査基準日の前1年間において、所属する技術者が取得したCPD単位総数を技術者の総数で割り、その単位数に応じて6段階(0,2,4,6,8,10点)で加点します。(単位数別の加点表は国において検討中)
●技能者点(10点満点) 審査基準日の前3年間において、CCUS技能者の内、レベルアップした人数をCCUS技能者総数で割り、その人数に応じて3段階の配点をします。 (レベル4技能者はそれ以上レベルが上がりませんので技能者総数からは除いて計算されます) ‥これらの技術者と技能者の配点を合計し、最大10点で加点されます。
令和5年申請での追加適用
W1-9 ワーク・ライフ・バランスに関する取組の状況(令和5年1月1日以降の申請で適用)
内閣府による「女性の活躍推進に向けた公共調達及び補助金の活用に関する実施要領」に基づき、審査基準日における各認定の取得をもって、以下の評点で評価がつくことになりました。
「プラチナえるぼし(女性活躍推進法に基づく認定)」「プラチナくるみん(次世代法にも基づく認定)」・・・配点5点
「えるぼし(第3段階)(女性活躍推進法に基づく認定)」「ユースエール(若者雇用促進法に基づく認定)」・・・配点4点
「えるぼし(第2段階)(女性活躍推進法に基づく認定)」「くるみん(次世代法にも基づく認定)」「トライくるみん(次世代法にも基づく認定)」・・・配点3点
「えるぼし(第1段階)(女性活躍推進法に基づく認定)」・・・配点2点
※ただし、上記認定のうち、最も配点の髙いもの1つのみ評価されます(最大5点)。
※審査基準日において、認定取消や辞退が行われている場合は加点対象とはなりません。
※上記配点はP点換算前の点数となりますので、ご注意ください。