例:完成工事高が平均1億円の業者Aと平均10億円の業者Bの評点は?
ア.A・・・19×1億÷10,000+565=584(P点換算後146)
イ.B・・・39×10億÷200,000+811=1006(P点換算後252点)
このように、売上高が10倍だからと言って評点も単純に10倍になるというわけではありません。
建設会計では、売上を「完成工事高」という科目で示されます。
この考え方は、当期内で請負工事がすべて終わっている、という前提があり、完成していない工事は売り上げとなっていないという考え方です。これを「工事完成基準」と呼びます。
しかし、これでは正確な収益(売上原価)が把握できません。具体的には次の不具合が生じます。
①完成した建物の引き渡しをした年度にだけ多額の利益が計上される→工事進行中の年度には利益が全く計上されない。
②施工中は販管費の支払いだけが損益計算に関わることとなり、多額の損失が計上される。
③建設業の実情として、工事の期間中に売上代金の中間払いが行われるなどがあるのに、工事完成基準だと決算内容と実情に大きい食い違いが現れる。
④納税面でも、年度ごとに成果を反映しない所得の波が生じてしまう。
これらにより、経営事項審査の結果にも年度ごとに大きな波が生じてしまいます。
そこで、これらの不合理をなくすために採用したいのが「工事進行基準」です。
工事進行基準とは工事の進行度合いに応じて損益の計上を行うというものです。ただし、これを採用するには以下の3点について信頼性をもって見積もることができなければなりません(成果の確実性が認め得られること)。
①工事収益の総額・・・契約に基づいて工事代金総額が確定していること。施工業者の工事完成能力があり、外部妨害要因がないこと。
②工事原価の総額・・・決算時の測定が確実であること・合理的に見積もられていること。また、事前も見積りと実績を対比させ、適時・適切に工事原価見積総額の見直しが行われることが必要。
③決算日における工事の進捗度・・・原価比例法など、決算日時点の工事進捗度を測定する方法が合理的な方法で行われていること。
工事進行基準が採用できれば、実態を正しく反映させることができます。
2.兼業事業売上高の見直し
例えば、建築一式工事と建設資材や住宅設備などの販売などを兼業している場合、これらの売上高はすべて「兼業事業売上高」としているものですが、それらの「設置工事」を行っている場合には、その工事も完成工事高に含めねばなりません。
建設資材や設備の方が工事よりも高額であっても、それらは工事のための「材料費」と考えられます。
本来なら完成工事高に計上すべき売上なのに、設置工事を全く考慮せずに住宅設備などの商品の販売と捉えてしまって、完成工事高から漏れていることがよくあるのです。今一度、兼業事業売上高の中身を再確認してください。
3.完成工事高の積上げ計算
先ほど、経審ではすべての業種を対象として審査を受ける必要はないと申し上げました。つまり審査を受ける業種を選択することができるわけですが、その場合審査を受けない業種にかかる完成工事高は評点にはまったく影響を及ぼしません。
これはこれで仕方ないのでしょうか?
例えば、建築工事業と大工工事業の許可を持っている業者が建築工事業で経審を受けるとします。
この場合、建築工事業と大工工事業は関連する業種ですので、経審を受けない大工工事業の工事高を建築工事業と合算することができるのです。
この合算は、関連のある場合には、一式工事+専門工事のみならず、専門工事間でも可能な場合があります。ただし、審査行政庁により判断が異なる場合がありますのでご注意ください。
2.設備投資
過去の経審では、固定資産を持つと評点が下がる仕組みとなっていました。
しかし、建設業者にとって設備投資は本来大変重要なものであり、工事の丸投げをするブローカーのような建設業者は本来排除されるべきものとされ、「利払前税引前償却前利益」を用いるように改められました。これにより、設備投資をして減価償却費が増えても利益額には影響しません。
また近年の改正により建設用機械保有状況による加点対象が拡大されておりますし、入札参加資格申請でも必要な建設機械を保有していることが求められております。
積極的な設備投資も大きな鍵となっています。