経営状況分析の各評価項目
負債抵抗力指標
収益性・効率性指標
財政健全性指標
営業キャッシュフローの額
1.営業キャッシュフローとは
営業キャッシュフローとは、企業が商品を販売したり、サービスを提供したりして得た収入から、原材料費などの支出を差し引き、営業活動から得られる現金収支を明らかにしたものです。
営業キャッシュフローについての計算式は以下の通りであり、経営状況分析では、直近2期の平均額から算出します。
営業キャッシュフロー=経常利益+減価償却実施額±引当金増減額-法人税住民税及び事業税±売掛債権増減額±仕入債務増減額±棚卸資産増減額±受入金増減額
キャッシュフローは、現金及び現金同等物の増減をみるためのもの(現金主義)です。現金とは、現金のほか、普通預金、当座預金など、事業者が自由に引き出せる預金が含まれます。現金同等物とは、3か月内に満期日あるいは償還日が到来する短期的投資である定期預金、譲渡性預金、コマーシャルペーパーなどです。
2.営業キャッシュフローの計算に関わる要因
a.プラス要因(キャッシュ・インフロー)
経常利益(税金等調整前当期純利益)、減価償却費、引当金の増加額、売掛債権の減少額、仕入債務の増加額、棚卸資産の減少額、受入金の増加額b.マイナス要因(キャッシュ・アウトフロー)
経常損失、引当金の減少額、法人税住民税及び事業税、売掛債権の増加額、仕入債務の減少額、棚卸資産の増加額、受入金の減少額
3.評点アップのポイント
「2のa.」プラス要因を創出することが重要となります。ただし、減価償却費と(貸倒)引当金が増加はプラスに働くとはいえ、それはすなわち経常利益の減少につながりますので、双方を一体として検討する必要があります。
利益剰余金の額
1.利益剰余金について
利益剰余金とは、
企業活動で得た利益から税金や配当金などを差引きして残った内部留保金を積み立ててきた金額を指します。
利益準備金は法定で積み立てることが義務付けられているものですが、利益剰余金は事業者独自の判断で積み立てるものです。
この利益剰余金が低い、あるいはマイナスになっていたりすると、利益が蓄積されたものがなくなりつつある、あるいはなくなった状態を指し、債務超過の状態と判断されます。
2.評点アップ対策
資本金は増資で対応できますが、利益剰余金とは「利益の積立金」といえ、長期的な蓄積であるので、毎
期の利益計上でコツコツと積上げる他ありません。
以前の記事で述べたように、「予算管理制度」を導入して、各部門や担当者のそれぞれの目標を明確な数値で立て、中・長期的な計画に沿って経営を行い、利益を蓄積していっていただきたいと思います。
営業キャッシュフローの減価償却実施額について
減価償却とは、「その企業がどれだけ積極的に設備投資をしているのか」という指針となります。
例えば、建設機械を購入しても、基本的に一気にはそれを経費とすることができません。毎年決められた比率で償却していくことが会計上定められています。固定資産には毎年償却していく「減価償却」の比率が定められています。従って、固定資産と言っても「土地」は償却できません。なぜなら、土地は毎年劣化していく性質のものではないからです(あくまで会計上の話です。実際は地価等の上下で毎年評価額は変わっていきますが)。
経営状況分析では、減価償却の実施額が多いほどプラスになります。
減価償却実施額は申告書別表16の(1)(2)(4)(7)(8)で記載されている「当期償却額」などの合計額で確認できます。
減価償却は営業キャッシュフローを図る上で重要な指針となります。なぜ、キャッシュフローでプラスになるのかというと、それだけ設備投資をすることで売上に貢献することになるという考え方に基づきます。これを「費用収益対応の原則」と言いますが、積極的な設備投資が加点に繋がることを理解していただきたいと思います。