経済的事情や虐待などから実親と暮らせない子のための特別養子縁組制度の対象年齢を「原則15歳未満」に引き上げることなどを柱とする改正民法などが7日、参院本会議で可決・成立した。縁組の成立要件を緩和するとともに、養親希望者の負担が重いと指摘される手続きを改定し、制度の利用促進を図る。改正は1988年の制度開始以来、初めて。公布から1年以内に施行される。
特別養子縁組は、安定した養親・養子関係、家庭環境を築くことで、子の健全な育成につなげることが目的。このため、養子となった子は、実親との法的な親子関係が消滅し、戸籍上は養親の「実子」と扱われる。実親に対する相続権もなくなり、実親との法的関係が続く普通養子縁組と異なる。
改正法は、対象年齢を「6歳未満」から「15歳未満」に引き上げ、小中学生まで拡大する。15歳からは民法上、普通養子縁組や遺言作成など一定の法律行為を本人の意思でできることを考慮した。2022年から18歳に引き下げられる成人年齢に満たない15~17歳も例外として、本人の同意や15歳になる前から養親希望者と暮らしていることを条件に認める。
法務省によると、特別養子縁組は18年に624件成立(速報値)。平均年齢は約1・5歳だった。望まぬ妊娠などで実親による養育が困難な赤ちゃんを想定して創設された経緯があり、政府関係者は「年齢引き上げによって直ちに件数が増えるわけではないだろうが、選択肢を広げることで一人でも多くの子の救済につなげたい」と説明する。里親委託からの切り替えなどが見込まれるという。厚生労働省によると、里親家庭や児童養護施設で暮らし、長期間にわたって実親と交流がないなど、養子縁組に適しているにもかかわらず年齢要件が障壁となっているケースが14~15年度に計46件あった。
一方、子の年齢が高くなるほど、血縁のない夫婦との親子関係の構築が難しくなり、実親と法的関係を解消するかどうかの判断を子が自ら行うケースも想定される。国会審議でも子の心理的負担を懸念する声があり、5月の衆院法務委員会ではNPO法人「特別養子縁組支援グミの会サポート」の安藤茎子理事長が、養親とは別に専門家など「子の伴走者」が必要だと指摘。「その子にとってどれが一番良い選択か、チームで考える状況をつくってもらいたい」と訴えた。
◇改正のポイント
・子の対象年齢を原則15歳未満に引き上げ
・条件を満たせば15~17歳でも縁組を容認
・家裁の手続きを2段階に分けて養親希望者の負担を軽減
・実親の同意は2週間を経過したら撤回不可
・児童相談所の所長も家裁に申し立て可能
(令和元年6月7日 毎日新聞より)