「神山和幸行政書士事務所」ホームぺージ 、経営規模等評価に関する記事

X1.経営規模等評価の評価項目(1)「完成工事高」

1.完成工事高(X1)について

完成工事高評点は経営規模等評価の総合評定値に占めるウェイトが高い、最も重要な評点項目です。
経審では、総合評定値を請求した建設業許可業種ごとに、審査基準日の直前2年または3年の平均完成工事高が評価されます(工事種類別年間平均完成工事高)。
業種ごとに選択することはできませんが、2年平均か3年平均か、いずれか有利なものを選択することができます。どちらが高得点かを検討しましょう。


例:完成工事高が平均1億円の業者Aと平均10億円の業者Bの評点は?
ア.A・・・19×1億÷10,000+565=584(P点換算後146)
イ.B・・・39×10億÷200,000+811=1006(P点換算後252点)
 このように、売上高が10倍だからと言って評点も単純に10倍になるというわけではありません。



2.工事進行基準とは?

本来、建設業は民法上の請負契約に基づいて契約を交わします。
請負契約は、工事の完成とその完成物の引き渡しをもって請負代金の支払いを受けることとなります。
建設業許可を取得する要件として財産的要件があるのはその請負契約の考え方があるためです。

建設会計では、売上を「完成工事高」という科目で示されます。
この考え方は、当期内で請負工事がすべて終わっている、という前提があり、完成していない工事は売り上げとなっていないという考え方です。これを「工事完成基準」と呼びます。
しかし、これでは正確な収益(売上原価)が把握できません。具体的には次の不具合が生じます。

①完成した建物の引き渡しをした年度にだけ多額の利益が計上される→工事進行中の年度には利益が全く計上されない。
②施工中は販管費の支払いだけが損益計算に関わることとなり、多額の損失が計上される。
③建設業の実情として、工事の期間中に売上代金の中間払いが行われるなどがあるのに、工事完成基準だと決算内容と実情に大きい食い違いが現れる。
④納税面でも、年度ごとに成果を反映しない所得の波が生じてしまう。

これらにより、経営事項審査の結果にも年度ごとに大きな波が生じてしまいます。
そこで、これらの不合理をなくすために採用したいのが「工事進行基準」です。


 工事進行基準とは工事の進行度合いに応じて損益の計上を行うというものです。ただし、これを採用するには以下の3点について信頼性をもって見積もることができなければなりません(成果の確実性が認め得られること)。
①工事収益の総額・・・契約に基づいて工事代金総額が確定していること。施工業者の工事完成能力があり、外部妨害要因がないこと。
②工事原価の総額・・・決算時の測定が確実であること・合理的に見積もられていること。また、事前も見積りと実績を対比させ、適時・適切に工事原価見積総額の見直しが行われることが必要。
③決算日における工事の進捗度・・・原価比例法など、決算日時点の工事進捗度を測定する方法が合理的な方法で行われていること。
 工事進行基準が採用できれば、実態を正しく反映させることができます。



3.完成工事高の評点をアップするには?

1.「利益率」にも注目した受注
 評点アップには、工事高を上げればよいのですから、工事の受注量をアップすればよい、ということになります。
 ただし、そのようなことはそう簡単なことではありません。
 そこで、「利益率」に重点を置いた受注が欠かせません。
 近年の制度改正により、完成工事高のウェイトが引き下げられ、利益額に重点が置かれつつあります。従いまして、きちんとした利益が確保できる優良な工事をどれだけ多くこなせるかが重要です。
 そのためには、「こういった工事、こういった工法なら他社には負けない」という特化した得意分野を磨く必要があります。
 他の業者でもできるような工事は価格競争となり、利益率も下がってしまいます。「強み」を作り、発揮しましょう!

2.兼業事業売上高の見直し
 例えば、建築一式工事と建設資材や住宅設備などの販売などを兼業している場合、これらの売上高はすべて「兼業事業売上高」としているものですが、それらの「設置工事」を行っている場合には、その工事も完成工事高に含めねばなりません。
 建設資材や設備の方が工事よりも高額であっても、それらは工事のための「材料費」と考えられます。
 本来なら完成工事高に計上すべき売上なのに、設置工事を全く考慮せずに住宅設備などの商品の販売と捉えてしまって、完成工事高から漏れていることがよくあるのです。今一度、兼業事業売上高の中身を再確認してください。

3.完成工事高の積上げ計算
 先ほど、経審ではすべての業種を対象として審査を受ける必要はないと申し上げました。つまり審査を受ける業種を選択することができるわけですが、その場合審査を受けない業種にかかる完成工事高は評点にはまったく影響を及ぼしません。
 これはこれで仕方ないのでしょうか?
 例えば、建築工事業と大工工事業の許可を持っている業者が建築工事業で経審を受けるとします。
 この場合、建築工事業と大工工事業は関連する業種ですので、経審を受けない大工工事業の工事高を建築工事業と合算することができるのです。
 この合算は、関連のある場合には、一式工事+専門工事のみならず、専門工事間でも可能な場合があります。ただし、審査行政庁により判断が異なる場合がありますのでご注意ください。



4.積上げ計算について

 経営事項審査では、審査を受けない業種の工事高を、審査の対象となる業種の工事高に積み上げることができます。
 積み上げることのできる工事は以下の通りです。
 なお、解体工事については、建築一式工事か土木一式工事のいずれかで、解体工事の内容に応じて積み上げることができます。なお、ある業種の工事を解体工事に積み上げることはできません。
・道路、橋、トンネル、ダムなどの土木工作物の解体工事の場合→「土木一式」へ積み上げ
・学校、病院、住宅などの建築物の解体工事の場合→「建築一式」へ積み上げ
 
【土木一式工事に振替可能な専門工事(例)】
とび・土工・コンクリート工事、石工事、タイル・れんが・ブロック工事、鋼構造物工事、鉄筋工事、ほ装工事、しゅんせつ工事、水道施設工事など

【建築一式工事に振替可能な専門工事(例)】
大工工事、左官工事、とび・土工・コンクリート工事、屋根工事、タイル・れんが・ブロック工事、鋼構造物工事、鉄筋工事、板金工事、ガラス工事、塗装工事、防水工事、内装仕上工事、建具工事など

【専門工事間で振替可能な工事(例)】
電気工事と電気通信工事、管工事と熱絶縁工事または水道施設工事、とび・土工・コンクリート工事と石工事または造園工事など
※相互に振替が可能です。
 
【注意点】
①積み上げに利用する業種は建設業の許可を受けていなければならない
※積上げ対象の業種は建設業許可を受けていないと受審できないので、振り返る業種と振り替えられる業種の両方で建設業許可が必要ということになります。
②一部だけを積み上げることはできない
③振り替えた業種は審査対象にならない
 振替元の工事は、売上高がゼロになるのではなく。受審できなくなります(つまり、入札参加もできなくなる)。
④総合工事への積み上げは互いに関連している必要があります。
 例:鋼構造物工事を土木一式工事に積み上げる場合、橋梁工事はその積上げ対象となりますが、建物等の鉄骨工事は土木一式工事ではなく。建築一式工事の対象となるので、積み上げできません。鋼構造物工事を建築一式工事に積み上げる場合は、橋梁工事はその対象になりません。



5.和歌山県入札参加についての注意点

 経営事項審査を受け、総合評定値が算定されていない業種や総合評定値通知書における2年又は3年平均の完成工事高が「土木一式」「建築一式」「とび・土 工・コンクリート」「電気」「管」「鋼構造物」「舗装」「塗装」「防水」「機械器具設 置」「電気通信」「造園」「建具」「水道施設」「消防施設」「解体」については250万円、「大工」「左官」「石」「屋根」「タイル・れんが・ブロック」「鉄筋」「しゅんせつ」 「板金」「ガラス」「内装仕上」「熱絶縁」「さく井」「清掃施設」については円を超えていない場合は入札参加資格審査を申請することはできませんので、ご注意ください。
 日頃より、250万円を超える工事を受注するなどの対策が必要となります。

X2.経営規模等評価の評価項目(2)「自己資本額及び平均利益額」

1.自己資本額について

自己資本額は貸借対照表の「純資産」の合計額をいいます。
資本金のみならず、利益剰余金などの剰余金、、純利益も含まれます。これら合計額の審査基準日単独か直前2年平均のどちらかを選択をすることができます。その額に応じた区分の算出式に当てはめて計算されます。

例:自己資本額が単年(平均)1億円の業者Aと単年(平均)10億円の業者Bの評点は?
ア.A・・・13×1億÷20,000+650=715
イ.B・・・21×10億÷200,000+816=921



2.平均利益額について

平均利益額で用いられる利益額は、「利払前税引前償却前利益(EBITDA)」額です。これは、税引き後利益に支払利息、法人税、減価償却費を足し戻した額となります。この額の2年平均が評価対象となります。
 これはその業者が利益を十分出しているか(赤字経営ではないか)、資金に余裕がどのくらいあるかを図るものだ言えます。

例:平均利益率が平均1千万円の業者Aと平均1億円の業者Bの評点は?
ア.A・・・8×1千万円÷2,000+544=584
イ.B・・・13×1億÷20,000+650=656



3.X2の評点計算

自己資本額と平均利益額の評点を下の計算式に当てはめてX2を求めます。
 X2=(自己資本額+平均利益額)÷2 (小数点切り捨て)

結果例:業者A (715+584)÷2=649  業者B (921+656)÷2=788



4.自己資本額及び平均利益額の評点をアップするには?

1.増資
 自己資本額を上げるには、簡単に言えば増資するのが最も早い対策です。
 しかし、経営者の経済的余裕や利害関係者等の協力を得られれば問題ないのですが、それが難しい場合もあります。
 先ほどの純資産のうち、①の株主資本には、資本金、資本剰余金、利益剰余金がありますが、利益剰余金のうち、繰越利益剰余金とは。利益の一部を内部に留保したものです。これを計画的に蓄積させていくことがポイントとなります。
 中長期的に経営計画を立て、少しでも利益を蓄積させ、純資産額を増加していきましょう。


2.設備投資

 過去の経審では、固定資産を持つと評点が下がる仕組みとなっていました。
 しかし、建設業者にとって設備投資は本来大変重要なものであり、工事の丸投げをするブローカーのような建設業者は本来排除されるべきものとされ、「利払前税引前償却前利益」を用いるように改められました。これにより、設備投資をして減価償却費が増えても利益額には影響しません。
 また近年の改正により建設用機械保有状況による加点対象が拡大されておりますし、入札参加資格申請でも必要な建設機械を保有していることが求められております。
 積極的な設備投資も大きな鍵となっています。