「神山和幸行政書士事務所」ホームぺージ 、経営状況分析各評価指標に関する記事

経営状況分析の各評価項目

負債抵抗力指標

1.純支払利息比率(X1)
 算出式 (支払利息-受取利息配当金)/売上高×100 
 Y点への寄与度 29.9%
 上限値 -0.3% 下限値 5.1%
 純資産利息利率は企業の健全性を示す指標です。これは、有利子負債から生じる支払利息から、貸付金を含めた金融資産から生じる受取利息・配当金を差し引いた上で、売上高に対して実質的な支払利息がどの程度あるかを表し、この数値が低いほど支払利息の負担が少なく、良好な状態を意味するということになります。

2.負債回転期間(X2) 算出式 (流動負債+固定負債)/売上高÷12
 Y点への寄与度 11.4%
 上限値 0.9か月 下限値18.0か月
 負債回転期間は企業の健全性を示す指標です。これは、負債が平均月商の何か月分になっているかをみるものです。この数値(月商倍率)が低いほど資金繰りが良好な状態を意味するということになります。

 

3.点数アップのポイント この指標で評点を上げるためには、実質金利を減少させること、もっと簡単に言えば、借入金の額を少なくし支払利息を減らすことです。

・定期や積立といった固定預金を解約するなどし、借入金の返済をすすめる。
・投資有価証券や土地などの遊休資産を売却するなどで資金を得、借入金の返済をすすめる。
・増資などができれば実施し、資金を調達したうえで、借入金の返済をすすめる。
・過剰な在庫を減らすことで、実質的に眠っていた資金により、借入金の返済をすすめる。など。



収益性・効率性指標

1.純支払利息比率(X3) 算出式 売上総利益/総資本2期平均×100 
 Y点への寄与度 21.4%
 上限値 63.6% 下限値 6.5%

 総資本売上総利益率は企業の資本収益性を示す指標です。これは、売上総利益が総資本(会社が外部から調達した借入金や社債などの「他人資本(負債)」と、株主が出資した資本金や過去の利益の蓄積などの「自己資本」を合算したもの)に対していくら得られているかを表し、この数値が高いほど収益性が良好な状態を意味するということになります。
 ただし、この指標を算出するとき、総資本額が3000万円未満の場合は3000万円に引き上げられてしまいます。従って、小規模であったり欠損額が大きいなどで総資本額が3000万円未満となる企業は不利になるということになります。

◎評点アップのポイント
 この評点をアップするには、総資本を減少させるか、売上総利益を増加させることがポイントです。
ア.総資本を減少させるには?
・定期や積立といった固定預金を解約するなどし、借入金の返済をすすめる。
・投資有価証券や土地などの遊休資産を売却するなどで資金を得、借入金の返済をすすめる。
・仮払金などの仮勘定科目(通過勘定)を放置せず、所定の勘定科目に振り替えて確定させる。など
イ.売上総利益を増加させるには?
・売上原価を下げるために、材料費、労務費、外注費、経費の支出が合理的に無駄なく行われるような管理システムを構築する。
・工程管理も徹底して行う。

2.売上高経常利益率(X4) 算出式 経常利益/売上高÷100
 Y点への寄与度 5.7%
 上限値 5.1% 下限値 -8.5%
 売上高経常利益率は企業の収益性を示す指標です。これは、企業が本業と本業以外の経営活動によって得た成果を集約したものとなり、この数値が高いほど利益率が高く良質な収益を上げていることを意味するということになります。

◎評点アップのポイント
 この評点をアップするには、経常利益をアップしなければなりません。売上高、売上原価、販管費の減少などが必要です。
 ア.質の良い売上高(完成工事高)を多くするには?
 ・赤字が出ることが分かっている工事は受注しない、無理な値引き要求には応じないようにする。
 ・原価管理・工程管理を徹底して、利益が少しでも多く出るよう図る。
 イ.売上原価の割合を低くするには?
 ・複数業者から見積もりを取って比較し、外注費を抑制する。
 ・材料管理を徹底的に行い、無駄な材料仕入れを避ける。  
 ウ.販売費および一般管理費の総額を少なくする。
 ・経費の合理化、人件費の見直しなど、リストラを進める。
 ・予算管理制度の導入。



財政健全性指標

1.自己資本対固定資産比率(X5) 算出式 自己資本/固定資産×100 
 Y点への寄与度 6.8%
 上限値 350.0% 下限値 ー76.5%

 自己資本対固定資産比率は企業の財政状態の健全性を示す指標です。企業が固定資産(建物、車輌、機械など)に対する負担がどれだけあるのか、を示しており、自己資本と固定資産の比率をみることにより、固定資産による財政圧迫度を示す指標ということになります。
 固定資産の評価額よりも自己資本額の方が大きければ、その数値は100を超え、高得点となりますが、固定資産が自己資本の範囲内に収まっていない(値が100を切る、あるいはマイナスになる)ということになりますと、不健全であるといえます。なお、自己資本の額が0円に満たない場合には、0円とみなされます。

◎評点アップのポイント
 固定資産より自己資本が多いほどよいわけですから、この評点をアップするには、自己資本を増加させるか、固定資産を減少させることがポイントです。
 
ア.自己資本の増加
 ・可能な限り増資をして資本金を多くする。代表者からの借入金は、これを増資に振り替える。
 ・継続的に利益剰余金を積み増すよう、経営努力をする。
イ.固定資産の減少
 ・経営活動に不要な有価証券や土地などの遊休資産を処分し、財政体質のスリム化を図る。

2.自己資本比率(X6) 算出式 自己資本/総資本÷100
 Y点への寄与度 14.6%
 上限値 68.5% 下限値 -68.6%

 これも、企業の財政状態の健全性を示す指標です。自己資本比率がマイナスとなりますと、債務超過状態であるといえます。
 評点アップのためには、(X5)に示した自己資本増加対策のほか、総資本(総資産)を減らすようにしなければなりません。 
◎総資本の減少
・(X5)で示した固定資産の減少対策を行い、それによって得られた資金を使って、(貸借対照表の貸方)借入金その他の負債を減少させる。
・定期や積立の解約、余剰在庫の減少、仮勘定科目の見直しなどを通じて、資金を作り、借入金の減少を図る。



営業キャッシュフローの額

営業キャッシュ・フロー(X7)算出式 営業キャッシュフロー(2期平均)/一億 
 Y点への寄与度 5.7%
 上限値 15.0億円 下限値 -10.0億円

 


1.営業キャッシュフローとは
 営業キャッシュフローとは、企業が商品を販売したり、サービスを提供したりして得た収入から、原材料費などの支出を差し引き、営業活動から得られる現金収支を明らかにしたものです。
営業キャッシュフローについての計算式は以下の通りであり、経営状況分析では、直近2期の平均額から算出します。
営業キャッシュフロー=経常利益+減価償却実施額±引当金増減額-法人税住民税及び事業税±売掛債権増減額±仕入債務増減額±棚卸資産増減額±受入金増減額
  キャッシュフローは、現金及び現金同等物の増減をみるためのもの(現金主義)です。現金とは、現金のほか、普通預金、当座預金など、事業者が自由に引き出せる預金が含まれます。現金同等物とは、3か月内に満期日あるいは償還日が到来する短期的投資である定期預金、譲渡性預金、コマーシャルペーパーなどです。



2.営業キャッシュフローの計算に関わる要因
a.プラス要因(キャッシュ・インフロー)
 経常利益(税金等調整前当期純利益)、減価償却費、引当金の増加額、売掛債権の減少額、仕入債務の増加額、棚卸資産の減少額、受入金の増加額
b.マイナス要因(キャッシュ・アウトフロー)
 経常損失、引当金の減少額、法人税住民税及び事業税、売掛債権の増加額、仕入債務の減少額、棚卸資産の増加額、受入金の減少額


3.評点アップのポイント
 「2のa.」プラス要因を創出することが重要となります。ただし、減価償却費と(貸倒)引当金が増加はプラスに働くとはいえ、それはすなわち経常利益の減少につながりますので、双方を一体として検討する必要があります。



利益剰余金の額

利益剰余金(X8) 算出式 利益剰余金/一億 
 Y点への寄与度 5.7%
 上限値 100.0億円 下限値 -3.0億円

 


1.利益剰余金について
 利益剰余金とは、企業活動で得た利益から税金や配当金などを差引きして残った内部留保金を積み立ててきた金額を指します。
 利益準備金は法定で積み立てることが義務付けられているものですが、利益剰余金は事業者独自の判断で積み立てるものです。
 この利益剰余金が低い、あるいはマイナスになっていたりすると、利益が蓄積されたものがなくなりつつある、あるいはなくなった状態を指し、債務超過の状態と判断されます。



2.評点アップ対策
 資本金は増資で対応できますが、利益剰余金とは「利益の積立金」といえ、長期的な蓄積であるので、毎期の利益計上でコツコツと積上げる他ありません。
 以前の記事で述べたように、「予算管理制度」を導入して、各部門や担当者のそれぞれの目標を明確な数値で立て、中・長期的な計画に沿って経営を行い、利益を蓄積していっていただきたいと思います。

営業キャッシュフローの減価償却実施額について

 減価償却とは、「その企業がどれだけ積極的に設備投資をしているのか」という指針となります。
 例えば、建設機械を購入しても、基本的に一気にはそれを経費とすることができません。毎年決められた比率で償却していくことが会計上定められています。固定資産には毎年償却していく「減価償却」の比率が定められています。従って、固定資産と言っても「土地」は償却できません。なぜなら、土地は毎年劣化していく性質のものではないからです(あくまで会計上の話です。実際は地価等の上下で毎年評価額は変わっていきますが)。
 経営状況分析では、減価償却の実施額が多いほどプラスになります。
 減価償却実施額は申告書別表16の(1)(2)(4)(7)(8)で記載されている「当期償却額」などの合計額で確認できます。
 減価償却は営業キャッシュフローを図る上で重要な指針となります。なぜ、キャッシュフローでプラスになるのかというと、それだけ設備投資をすることで売上に貢献することになるという考え方に基づきます。これを「費用収益対応の原則」と言いますが、積極的な設備投資が加点に繋がることを理解していただきたいと思います。