建設業許可を申請する個人事業者様で、これまで白色申告で確定申告をされている方には、「貸借対照表」「損益計算書」の作成は初めて、という方もおられるでしょう。
貸借対照表とは何か?損益計算書とは何か?
簡単に申し上げると、「貸借対照表」はある特定日の事業者の(事業用)財産の状況です。例えば平成28年12月31日などの「ある特定日」の時点で、「どのような財産(元手)によってどのような財産に変わったか?」ということを示しています。それに対して「損益計算書」とは、「ある一定期間の間にどれだけの売り上げがあり、どれだけの経費をかけ、どれだけの利益をあげることができたのか(あるいは損失をだしたのか)」という、いわゆる「利益の状況」を示す書類です。個人事業者の確定申告の「収支計算書」にあたります。 言い換えれば、損益計算書で示された利益(損失)の結果としての財産状況として貸借対照表があります。よって、作成の順序は損益計算書→貸借対照表となりますね。
ではここで、貸借対照表の項目とその書き方を簡単に解説します。
その前に貸借対照表の仕組みを簡単に解説してみましょう。
☆貸借対照表の仕組み
貸借対照表とは、ある特定日の事業者の財産状況である、どのような財産(元手)によってどのような財産に変わったか?ということを示していると申し上げました。

元手にもいろいろあります。自己資金であったり、借入金であったり、また事業を数年続けていくうちに蓄積された利益などもあるでしょう。自己資金や利益はご自身が出資した資金です。これを「純資産」といい、一方借入金やまだ支払っていないお金(未払い金)などを「負債」と呼びます。これらはすべて
貸借対照表の右側に記載されます。
一方、その純資産や負債によって得た資金がどのような財産(資産)に変わったかを示すのが貸借対照表の左側です。事業用の建物や車両、備品などに変わった、商品に変わった、現金や預金のまま残った、というように、得た資金は何らかの形に変わり手元に残るはずです(売れた商品は原価としてなくなり、利益(所得)として残り、右側の純資産に移る)。
結果、
貸借対照表は右側と左側の金額が同じとなります。
バランスシート(B/S)と呼ばれているのはここに由来があります。それでは、次に貸借対照表の記載方法を簡単に解説しましょう。
☆貸借対照表の書き方
1.資産の部
①流動資産
現金預金とは、現金(小切手、送金為替手形なども含む)、預貯金、金銭信託等で、決算期後一年以内に現金化できるものです。預貯金等は通 帳などでご確認ください。
受取手形があれば記入。すでに完成した工事で入金がない(売掛状態) のものは、
完成工事未収入金に記載します。概ねこれでOKです。
②固定資産
建物・構築物、
機械・運搬具、
工事器具・備品などは、売却した時に売れるであろう金額を記載してください。
工場の土地等を所有しておられる場合は、評価額や鑑定額ではなく、購入した時の価額とします。
これで概ね資産の部は出来上がりました。
2.負債の部
材料や道具等の購入代金を含む完成した工事の未払金があれば
工事未払金に記入します。
工事未払金以外でガソリン代や固定資産購入代金で未払い金があれば
未払金に記入します。
事業用として銀行等から借り入れがある場合、1年以内に返済される予定のものは
短期借入金、それ以外は
長期借入金となります。
従業員がいればその方達から預かった源泉税の未納分などが
預り金となります。
3.純資産の部・その他 まず、当期利益額を事業主利益に転記します。
次に、事業主仮勘定、事業主貸勘定についてです。
この科目は次のような意味を持っています。
事業主借勘定:事業主の持っている事業外資金を事業の資金として充当させたもの 事業主貸勘定:事業主が事業の資金から事業外資金(家事費など)に充当したもの
現金出納帳から一年間に家事に支出した金額、家事から借りた金額を合計して記入してください。
最後に期首資本金です。
前年に貸借対照表をつくっていれば、資本(純資産)合計の金額がこれにあたります。
つくっていない場合は以下の計算式から逆算してください。
期首資本金+事業主借勘定-事業主貸勘定+事業主利益=純資産合計
これでおおかた記入が終わったと思います。
未算入の勘定科目の中に、該当するものがないか点検してください。
あとは計算ミスがないことを確認し、右の合計(負債+資本)と左の合計(資産)が同じ額になっていれば完成です。
なお、個人事業主様に注意していただきたいのは、決算期です。
例えば平成26年中に申請を行う場合は、平成25年の決算書類が必要です。
前年に遡って決算書を作っていただく必要がありますので、ご注意ください。
当事務所では個人事業者様向けの記帳代行、決算書類作成の代行を行っております。ただし、納税書類は業法により禁止されており、ご自身で作成する必要がありますので、申告時期に税務署等で申告書類の指導を受けてください。
なお、実際に貸借対照表をお作りになる際には、なるべくプロの指導を受けるか、チェックをしてもらうことをお勧めします。