医療法人の設立
医療法人のしくみ
医療法人とは、医療法に基づく特別法人です。法人によるメリットを享受し、医療の近代化・合理化を可能にします。医療法人は株式会社では設立できず、社団法人か財団法人のいずれかの形態をとりますが、社団法人の形態をとることがほとんどです。 また、医療法人においては医療法で定められている業務以外は禁止されています。1.役員
医療法人は、法律の規定により、原則として理事3名以上および監事1名以上の役員を置かなければなりません。
ただし、特別な事情があり、知事の認可を受けた者に限り、理事は1人でも可能です。この場合、医師又は歯科医師が1人または2人常時勤務する診療所で、なおかつ1か所のみに限られます。なお、監事は省略できません。
2.理事
株式会社でいうなれば取締役に相当します。理事は法人ではなれません。理事は社員総会にて選ばれます。
3.理事長
理事の中から互選して選出される理事長は医療法人の代表権を有し、法人の業務を総理します。原則として医師又は歯科医師であることが必要です。4.監事
監事は理事または医療法人の職員を兼ねることはできません。社員ではあってもいいですが、出資金等の拠出はできません。
社員と社員総会
社員とは株式会社の株主のような立場でありますが、株主とは違い、社員総会において一人一個の議決権を有します。つまり出資持分のある医療法人においても社員の地位は出資持分とは連結していません。
社員総会は株式会社での株主総会のようなものであり、定款で定める法人の重要事項について決議されることになります。
医療法人の体系
医療法人には、社団・財団の区別のほかに、いくつかの種類があります。
1.特定医療法人 特に公益性の高い医療法人が国税庁長官に承認されることにより税制面での優遇を受けることができます。主に大規模病院が対象となります。2.社会医療法人 特定医療法人よりさらに公益性の高い医療法人です。都道府県の公的医療機関の受け皿を担うことを趣旨として、都道府県の認定を受ける必要がありますが、様々な要件をクリアしなければなりません。しかし、様々な優遇措置があり、税制面では医療保健業に係る所得については非課税、その営業のために使用する土地等にかかる固定資産税についても課税されません。
医療法人設立のスケジュール
医療法人を設立するまでのスケジュールはおおむね以下のようなスケジュールになっております。通常では仮申請から認定書交付まで5か月くらいはかかります。なお、医療法人設立認可申請ができるのは各都道府県によっ年1~2回のスケジュールが決められています。
①医療法人設立説明会
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設立の意思表示をされた方は、必ず説明会に出席しなければなりません。
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②定款の作成
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定款にはおもに次のようなことを定めます。
目的、名称、主たる事務所の所在地、設立時社員の氏名・名称と住所、社員の資格の得喪に関する事項、役員(理事、理事長、監事)に関する事項、公告方法、事業年度など
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③設立総会の開催
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医療法人の社員・理事・監事が集まって設立総会を開き、医療法人の基本的事項を決定し、承認を受けます。 |
④設立認可申請書の作成
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認可申請書ほか様々な書類を作成しなければなりません。ただし、個人開設から法人となる場合には、何点か省略できる場合があります。 |
⑤設立認可申請の内容についての審査(仮申請)
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各都道府県による審査・ヒアリング等が行われます。 |
⑥設立認可申請書の提出(本申請)
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各都道府県の審査後、医療審議会へ書類が回されます。 |
⑦医療審議会への諮問
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医療審議会等の諮問機関による審査が行われ、答申されます。 |
⑨設立認可書交付
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諮問機関の答申に基づき、認可書・認可証明書の授与がなされます。 |
⑩設立登記手続
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「設立の認可、出資の払込みその他設立に必要な手続が終了した日から2週間以内」に主たる事務所を管轄する法務局で医療法人の設立登記を行ないます。 |
◎仮申請・本申請について・・・仮申請とは、作成した書類一式の内容を事前にチェックしてもらうために行います。設立申請については、医療審議会等の諮問機関が本審査を行いますが、その前に内容に問題がないか、修正すべきところはないかを審査します。申請者との面談による審査、関係施設について保健所等関係機関への事前照会や実地調査なども行います。
医療法人認可から保険医療機関指定まで
医療法人設立まで
医療法人設立の登記は「設立の認可、出資の払込みその他設立に必要な手続が終了した日から2週間以内」に行わなければなりません。ただし、認可書の到達から2週間以内ではありませんので、ご注意ください。
また、事業年度末日と設立登記は調整するようにお願いいたします。
詳しくは打ち合わせの際にご説明いたします。
診療所の開設まで
医療法人設立後、診療所の開設許可申請書を提出します。
個人の診療所開設は届出で済みますが、医療法人が開設者となる場合は、解説届に先駆けて許可を得ることが必要となります。
その際にお気を付けいただきたいのは、個人の診療所から自動的に医療法人に切り替わるわけではない、ということです。忘れずに個人の診療所の「廃止届」を提出するようにしてください。
また、レントゲンを設置している個人の診療所の場合、「診療用エックス線装置備付届」と同「廃止届」も提出する必要があり、その備付届には「エックス線漏えい検査報告書」を添付しますが、それはレントゲン業者に依頼する必要がありますのでご注意ください。
保険診療の切り替えまで
一連の手続を終えた後、地方厚生局に「保険医療機関指定申請書」を提出します。この場合も自動的に切り替わるわけではありませんので、指定申請と同時に「(法人設立前の診療所の)廃止届」も提出します。
医療法人の仮申請から一連の手続完了まで丸1年かかる場合もございます。しかも、各締め切りの厳守も必要ですので、しっかりとスケジュールを立てる必要があるのです。