成年後見制度の変遷
現在の成年後見制度について
成年後見制度という言葉そのものは、実はかなり最近にできた言葉です。
成年後見に似た制度が過去にはありました。
旧民法では、「禁治産」「準禁治産」という言葉がありました。もしかすると、これらの言葉の方が聞き慣れた人もおられるかもしれません。
禁治産、とは「自分の財産を治めることを禁じる」という意味です。
本来ならば、民主主義である我が国では個人財産は個人の自由にすることが絶対条件です。
しかし、何らかの理由で個人が自身の財産を自由にすることが不適当である、と判断される場合があったわけです。
その「何らかの理由」というのが、旧民法の場合、「心神喪失ノ状況ニ在ル者」の場合は「禁治産」と、「心身耗弱及ヒ浪費者」の場合は「準禁治産」となるとなっていました。これらの判断は家庭裁判所が行いますが、宣告後は戸籍にも記載されてしまいます。
当時はそれを「無能力者(つまり能力のない者)」と民法にも規定されていたため、世の中の差別を招いていたのです。
そのほか、この旧制度には以下のような問題点が指摘されていました。
①夫婦の一方が禁治産者・準禁治産者になった場合、配偶者が必ず後見人になる。
・・・夫婦が高齢になった場合、十分な後見事務ができなくなるおそれがある。
②後見人等は単独でなければならない。
・・・これでは、後見人は24時間、あらゆる事情に一人の後見人が対応しなければならなくなる。
③判断能力のみに応じて「心神喪失」か「心身耗弱」の2通りでしか分類できない。
・・・100人いれば100通りの事情があるのに、それにまったく対応できない。
これらに加えて、この制度では「本人の財産の減少を防ぐ」ことが第1の目的であり、「本人の生活を守るために財産を利用する」ことや、「療養看護の側面から保護する」という視点が欠けていました。
そこで、成年後見制度は大きく改正され今日に至っています。