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利益相反取引

(1)利益相反取引とは

例えば中小会社を清算して個人事業にしようとするとき、会社の建物や事業用車両はどうしますか?
  中小会社はたいてい取締役が一人、あるいは家族で、というケースが多いので、事業主が会社の建物や車両を引き継ぎます。つまり、たいていは会社が取締役個人に会社の資産を譲渡することになるでしょう。
  しかし、それは厳密にいえば、会社の利益を犠牲にして取締役個人が得をすることになります。このような取引を「利益相反取引」といい、そのままでは登記や自動車の名義変更手続もできません。
  取締役個人が当事者あるいは第3者の代理人・代表者として会社と財産の譲受を受けるような取引、いわゆる「直接取引」の場合はもちろん、会社が取締役の債務を保証したり、会社が取締役の債務を引き受けるなど、会社・第3社間の取引により取締役が利益を受け、会社が不利益となる「間接取引」もこの「利益相反取引」にあたります。

〇直接取引による利益相反取引の例
取締役と会社間で行われる売買契約
会社から取締役へ行われる贈与
取締役からの利息がついた会社への金銭貸付
会社から取締役へ行われる債務免除
取締役が受取人となる会社からの約束手形の振り出し

〇間接取引による利益相反取引の例
取締役と第三者間の債務を会社が保証する契約
取締役が第三者間とする債務を引き受ける契約

  このような「利益相反取引」を行うには、事前に会社(株主総会、取締役会設置会社の場合は取締役会)の承認が必要となります
 また、取締役会議事には利益相反取引の当事者たる役員は議事には参加できず、他の役員は実印を押印の上、印鑑証明書を添付する必要がある場合があります。また、取引後,遅滞なく当該取引についての重要な事実を取締役会に報告する必要があります。

(2)承認を受けない利益相反取引

上記の承認を受けなかった場合の取引は、会社との関係では無効となります。
 では利益相反取引になるかいなかの判断ですが、ポイントは会社にとって不利益となるかどうかという点です
 例えば、取締役個人が会社に金品を贈与する、金銭を無利息・無担保で貸し付ける行為などは、会社に不利益を与えるものではないので、利益相反取引にはあたりません。ただ、不利益になるかどうかの判断がつかない場合は、念を入れて会社の承認を得たほうが無難です。


(3)会社に損害を与えたとき

利益相反取引により会社に損害が生じたときは、事前に会社の承認を得たか否かに関わらず、利益相反取引を行った取締役、承認決議賛成した取締役は、任務を怠ったと推定され、会社に対して損害賠償責任を負います。
 従いまして、利益相反取引は慎重の上に慎重を期して行うことが重要です。