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事業付属寄宿舎について

例えば、山間部等のトンネル工事で長期にわたり労働者に労働させる必要がある場合に臨時の宿舎を設ける必要があります。こういう宿舎を労働基準法上では「寄宿舎」とよびます。


寄宿舎の要件

労働者を集団で住まわせるものがすべて寄宿舎とは言えません。例えば独身寮や社宅などは寄宿舎ではありません。
 寄宿舎とは、「事業経営の必要上その一部として設けられているような、事業との関連性を持つもので、常態として相当人数の労働者が宿泊し、共同生活の実態を備えているもの」をいいます。
 従って、例えば福利厚生施設として利用されるアパート式寄宿舎のように「事業経営の必要上その一部として設けられて」いない施設、また「共同生活の実態」とあるように、例えば社宅や独身寮のように、それぞれ独立した生活を営む(部屋が一人一部屋など)施設は寄宿舎ではありません。


寄宿舎の自治

労働基準法では、「使用者は、事業の附属寄宿舎に寄宿する労働者の私生活の自由を侵してはならない」ことと、「使用者は、寮長、室長その他寄宿舎生活の自治に必要な役員の選任に干渉してはならない」と定められています。かつては、使用者が労働者の私生活まで不当な干渉をすることが多かったため、労働者の私生活の自由を確保する必要があります。
 具体的には以下のような行為が禁じられています。
①外出又は外泊について使用者の承認を受けさせること。
②教育、娯楽その他の行事に参加を強制すること。
③共同の利益を害する場所及び時間を除き、面会の自由を制限すること。


寄宿舎規則

 使用者は事業の付属寄宿舎に労働者を寄宿させる場合、寄宿舎規則を作成し、所轄労働基準監督署に届け出なければなりません。変更した場合も同様です。
 寄宿舎規則に盛り込まねばならないのは以下の5つです。
① 起床、就寝、外出及び外泊に関する事項
② 行事に関する事項
③ 食事に関する事項
④ 安全及び衛生に関する事項
⑤ 建設物及び設備の管理に関する事項

ただし、上記①~④については、寄宿する労働者の過半数代表者の同意が必要です。


寄宿舎の設備及び安全衛生

寄宿舎の設備や安全衛生についても、労働基準法では、「使用者は、事業の附属寄宿舎について、換気、採光、照明、保温、防湿、清潔、避難、定員の収容、就寝に必要な措置その他労働者の健康、風紀及び生命の保持に必要な措置を講じなければならない」と定められています。
なお、事業付属寄宿舎を設置・移転・変更する場合、一定の要件に該当する場合に限り、その工事着手する14日前までに所轄労働基準監督署に届け出ねばなりません。