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法定後見のあらまし(Q&A)

Q.成年後見制度とは?
成年後見制度は、認知症、知的障害、精神障害などの理由で判断能力の不十分な方々を保護し、支援する制度です。

Q.法定後見等とは?
家庭裁判所に後見等の申立て行い、法定後見等の開始および成年後見人等の決定の審判を受け、選ばれた後見人等から財産管理や身上監護など必要な支援を受けるという制度です。
ご本人の状態を勘案し、①後見②保佐③補助の3類型の中でご本人に適したバックアップ方法が決定されます。
※成年後見の申し立てを行った結果、後見ではなく、保佐・補助の決定がなされる場合があります。
Q.どのような方々が対象となるのですか?
認知症・精神障害者、知的障害者等の方々のうち、すでに判断能力が低下・減退し、財産管理等の法律行為を行うことに支障がある方が対象となります。
Q.申立てできる人は誰ですか?
ご本人はもちろん、配偶者・四親等内の親族、検察官が申立ての権利を有します。
また、上記の申立て権者がいない場合で、特に本人の福祉を図るために必要がある場合には、市町村長が申立てを行うことができます。
Q.成年後見人になっていただきたい方がいるのですが?
候補者を立てることは可能ですが、必ずしもその人に決定するとは限りません。
候補者としてもっとも多いのはご親族ですが、弁護士・司法書士・行政書士・社会福祉士などの専門家が就任することも増えてきました。
なお、未成年者や破産者、家庭裁判所で後見人等を解任された人、本人に対して訴訟をした人・その配偶者・直系血族は後見人等になれません。
Q.後見人等はいつから仕事を始めるのですか?
A.審判が確定した後、その旨の登記が行われ、成年後見人等は財産目録と年間収支予定表を作成し、家庭裁判所に提出します。その後、本人支援のための事務を開始します。

法定後見について

法定後見制度の類型

法定後見制度では、その判断能力の低下程度によって、3つの類型に分けられています。
 それらは、認知症や知的障がい・精神障がいなどの症状の程度などに応じて分類されます。 
   どの分類にあたるのについては、医師による診断書・鑑定書等をもとに決められます。

 法定後見制度には、 「後見」「保佐」「補助」という3つの類型があります。
 なお、例えば「補助」の審判を受けた人が、その後「後見」「保佐」等の類型を利用する必要が出た場合も申立てによります。また、これらの後見等の必要がなくなった場合にも、審判取消の申立てを行います。

後見  本人の判断能力がまったくない場合、つまり自分の行為の結果について合理的な判断ができず、自己の財産を管理・処分することができない場合に「後見」が当てはまります。具体的に言えば、金銭管理や日常的に必要な買い物も自分ではできず、誰かに代わってもらう必要がある程度です。
 目下、法定後見全体の9割近くがこの類型を利用しています。
 後見人は、日常生活に関する行為(簡単な買い物など)を除き、すべての法律行為に関する取消権・代理権を持っています。
※取消権は、その法律行為をなかったことにできる権利です。また、追認権(取消権の逆の権利で、「取消しません(その行為を認めます)」と宣言(意思表示)すること。追認したら取り消せない)も後見人が行使します。

保佐 本人の判断能力が著しく劣っていて、自己の財産を管理・処分するには、常に援助が必要な方に「保佐」が当てはまります。この保佐については、例えばノイローゼ患者やヒステリー患者なども含まれてきます。日常的に必要な買い物程度は単独でできるが、重要な財産行為(不動産、自動車の売買や自宅の増改築、金銭の貸し借り等)は自分ではできないという程度です。
 保佐人は以下の行為について、同意権、取消権(追認権)が付与されます。つまり、同意を得ないで行った以下の行為については取消すことができるということです。いったん同意した行為は取り消せません。
※当然ですが、この保佐人にも日用品の購入その他日常生活に関する行為は取り消せません。
ア.元本を領収し、又は利用すること。 
※元本の領収、とは、利息、家賃、地代が生じる財産の受領。預貯金の払戻し、弁済金の受領を含みます。
また、元本の利用、とは、法定果実の取得を目的とする、利息付消費貸借による金銭の貸付、不動産の賃貸等です。
イ.借財又は保証をすること。
 ※「借財」とは、消費貸借契約により金銭を借り受けること。「保証」とは、借入金債務の保証人として保証債務を負担することなどがあります。
ウ.不動産その他の重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。
 ※不動産に関わる様々な権利(売買はもちろん、地役権や賃貸借契約、抵当権や質権などの設定や解除などの行為)や、雇用契約、委任契約、介護契約、施設入所契約等の行為についてです。
エ.訴訟行為をすること。
オ.贈与、和解または仲裁行為をすること。
 ※「贈与を受ける」場合は含まれません。
カ.相続の承諾もしくは放棄または遺産の分割をすること。
 ※「相続」には、被相続人の負債なども含まれますので、重要です。
キ.贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申し込みを承諾し、又は負担付き遺贈を承認すること。
※贈与や遺贈に「負担」が付いている場合、どのような負担を付与されているのかが重要となります。
ク.新築、改築、増築または大修繕をすること。 
※これも、財産である家屋等に大幅な変更をするものであり、重要です。
ケ.法律で定められた賃貸借期間を超える賃貸借をすること。
なお、保佐人はこのままでは「法定代理人」ではありません。代理権を設定するには、 家庭裁判所に代理権付与を併せて申立て、審判を受ける必要があります。また、上記1.~9.以外の法律行為について同意権・取消権を設定する場合も同様の審判を受ける必要があります。

補助
 本人の判断能力が不十分で、自己の財産を管理・処分することはできるのだが、細部において手助けが必要な方が当てはまります。
 そういう方なので、補助人は先ほど「保佐」であげたア.~ケ.のうちの一部の行為について同意権・取消権(追認権)が付与されます。ですから、自動的に決まる事務はなく、代理権についてもその付与の審判を受ける必要があります。
 簡単にいえば、「Aさんは日常生活にも問題なく、重要な法律行為もほとんど一人でできるのだが、不動産管理については補助が必要だ」ということであれば、不動産に関する法律行為のみ同意権・取消権を補助人に付与する、ということになります


法定後見の流れ

1.事前に医師の診断書など申立てに必要な書類を用意し、準備後それらを家庭裁判所に提出します。
2.家庭裁判所の職員が、申立人・後見人等候補者・ご本人への事情や意思等の確認、ご本人の親族への賛否確認、ご本人の判断能力判定のための精神鑑定などを行います。
3.提出した書類・調査結果・鑑定結果等の内容を検討し、本人にとって後見等の開始が必要であると判断すれば、裁判所は後見の開始(後見人の選任を含む)の審判をします。
◎法定後見人等の報酬はご本人の財産の額・後見事務の内容などを総合的に考慮し、家庭裁判所による審判で決定します。
◎成年後見人は事実行為(介護・送迎・付き添いなど)や医療行為への同意、身元保証人等への就任はすることができません。

任意後見と法定後見の違い

さて、任意後見については、これら3つの類型のようなものは存在しません。
つまり、任意後見人にどのような代理権を付与するのかは、あくまで本人が契約の中で定めることになります。
 法定後見の場合、後見人を本人の希望で選任することはできませんが、推薦することはできます。それに対して、任意後見契約では、後見候補者を本人が指名します。
  、「任意後見人には取消権は付与されない」ということです。 
つまり、例えば本人が後見人に無断で不動産を処分してしまった場合、この重要な法律行為を任意後見人は取消すことができないのが、任意後見の大きな欠点です。ただし、これは包括的な取消権ですので、任意後見契約をする時にしっかりと取消権についても決めておくことで解決できます。

「法定後見と任意後見の違い」まとめ

 法定後見任意後見
後見人等の決定 候補者の推薦により裁判所が決定 本人が決定
後見等の種類 「後見」「保佐」「補助」の3類型 なし
後見人等の監督 家庭裁判所 任意後見監督人
後見人等の仕事 3類型によって異なる 任意後見契約により決定
本人の法律行為の取り消し できる
(ただし保佐・補助の場合審判が必要)
できない
(ただし、任意後見契約に盛り込むことで
取消権行使可能)