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労働契約

労働契約とは?

人を雇用する場合も、契約を結ばねばなりません。
その場合の契約については、民法という法律に、「雇用は、当事者の一方(つまり労働者)が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方が(つまり使用者)これに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる(623条)」と定められていますが、この「雇用」に関する規定だけでは甚だ不十分ですし、実態は使用者と労働者は対等とは言えず、労働者の保護を図る必要があることから、労働契約について、労働基準法や労働契約法などの法律で規定されています。
 
労働契約を締結するうえで、労使双方は以下のことを守らねばなりません。
①対等の立場による合意により労働契約を締結し、または変更するべきこと。
②就業の実態に応じた均衡に配慮すべきこと。
③信義に従い、誠実に権利を行使し、義務を履行すべきこと・
④仕事と生活の調和に応じた均衡を考慮すべこと。
⑤権利の濫用の禁止。
⑥使用者は労働者の安全に配慮すべきこと。


労働期間

労働契約には、「期間の定めのあるもの」と「期間の定めのあるもの(有期労働契約)」があります。
期間の定めのないものとはいわゆる正社員がこれに該当します。
期間の定めのあるものとはいわゆる契約社員がこれに該当します。

期間の定めがあるということは定められた期間は労働者の一方的な意思により会社を退職できないことを意味します。したがって、労働契約が不当な長期の人身拘束にならないよう、有期労働契約には原則「最長3年」と法律で定められております(例外規定あり)。

※定年制というのがあります。定年制は「〇〇歳まで正社員として在籍できます」という定めに過ぎず、有期労働契約には当たらないので、不当な人身拘束とは言えません。

ただし、民法628条の規定によりやむを得ない事由がある場合(一年の有期雇用契約に限る)、または有期労働契約を締結してから一年を経過した日以後(一年を超える有期雇用契約の場合、ただし例外あり)については、退職が可能です。

労働条件の明示

労働契約を締結する際には、使用者は以下の労働条件を明示せねばなりません。
1.必ず明示しなければならないことは下記の通りです。昇給に関する事項を除き、すべて書面で交付せねばなりません。
①  労働契約の期間に関する事項
②  期間の定めのある労働契約の場合に、契約を更新する場合の基準に関する事項
③(雇い入れ時の)就業の場所、従事する業務の内容
④  始業・終業の時刻、所定労働時間を超える労働(早出、残業など)の有無、休憩時間、休日、休暇および交替制勤務をさせる場合は就業時転換に関する事項
⑤  賃金(退職手当及び臨時に支払われる賃金、賞与その他これらに準ずる賃金を除く)の決定、計算・支払いの方法および賃金の締切り・支払いの時期に関する事項並びに昇給に関する事項
⑥  退職に関する事項(解雇の事由を含む)
2.もし、使用者が定めをする場合に明示しなければならない事項というものがあります。下記の通りです。これらの者は、書面である必要はありません。
⑦  退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算・支払いの方法および支払いの時期に関する事項
⑧  臨時に支払われる賃金、賞与等に関する事項
⑨  労働者に負担させる食費、作業用品その他に関する事項
⑩  安全衛生に関する事項
⑪  職業訓練に関する事項
⑫  災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
⑬  表彰及び制裁に関する事項
⑭  休職に関する事項


労働契約でしてはいけないこと

労働契約を締結する上で禁止されているのは下記の通りです。

1、賠償予定の禁止
労働者は使用者の指揮監督下で労働をしなければなりませんが、労働契約を守らないことで使用者が損害を与えられた場合には、労働者はその責任を負わなければなりません。しかし、労働契約ではその損害賠償金額をあらかじめ定めることは禁止されています。ただし、現実に生じた損害についての賠償請求は禁止されていません。

2.前借金相殺の禁止
使用者は、労働者に予め金銭を貸し付け、それを賃金と相殺することは禁止されています。
ただし、使用者が労働者に金銭を貸し付けることは禁止されていません。例えば、100万円を貸し付け、月5万円を給与から天引きし、全額返済するまで退職できない、などといった約束を強制できないという意味です。
なお、労働者が賃金からの天引を申し出、退職の自由も侵されないということが明白である場合は、この制限から除外されます。

3.強制貯金の禁止
使用者が労働契約に附随して貯蓄を強制することはできません。
ただし、労働者の委託を受けて貯蓄金の管理を行う(社内預金制度)ことは、一定の手続を行えば、行うことができます。